(社説)首相の答弁 疑念晴らす気あるのか

社説

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 野党の質問に正面から答えず、用意した紙を読み上げる。角度を変えた問いかけにも、同じ説明をひたすら繰り返す。これでは、政権に寄せられた数々の疑念を本気で晴らすつもりがあるのか、疑わしい。

 予算委員会での論戦がきのう衆院で始まった。先週の衆参両院の代表質問は、質問1回答弁1回の一方通行のため、安倍首相のはぐらかしや紋切り型の答弁が際立った。しかし、一問一答形式の予算委に移っても、首相の姿勢は相変わらずで、野党統一会派の5人が取り上げた、三つの疑惑をめぐる議論は一向にかみ合わなかった。

 桜を見る会については、後援会関係者の招待が増えたのは「長年の慣行の結果」、前夜祭の明細書はホテルの意向で出せない、名簿の電子データを廃棄したコンピューターの履歴の確認は必要ない――。納得のいく証拠が示されなければ、言い分をうのみにはできない。

 カジノ汚職を受け、統合型リゾート(IR)誘致をめざす自治体への業者の働きかけを調べるべきだという提案にも、選定手続きが始まっておらず、「この段階で調査はできない」。公職選挙法違反疑惑で辞任した2閣僚が説明責任を果たしているか問われても、「国民が判断すべきもの」として、自らの評価を示すことから逃げ続けた。

 きのうは自民党河井案里参院議員の陣営が昨年夏の参院選で、党本部から1億5千万円を受け取っていた問題も俎上(そじょう)にのぼった。確かに政治資金規正法上、政党本部から政党支部への寄付に上限はない。だが、同じ広島選挙区で自民党が公認したもう1人の現職側への資金は10分の1の1500万円だった。

 首相は「政治資金の運用は党本部に任せている」として、自らの判断を否定したが、近しい人物を優遇するという首相の公平性に対する疑念は、森友・加計問題にも通じるものだ。

 先週の衆院本会議での自民党席からと見られる心ないヤジについての答弁もひとごとだった。国民民主党玉木雄一郎代表が選択的夫婦別姓の実現を求めた質問の際、「それなら結婚しなくていい」とのヤジが飛んだ。野党は自民党の杉田水脈(みお)衆院議員の発言とみて、自民党に確認を求めている。

 首相は「院内の不規則発言についてコメントする立場にない」「国会対策委員長に対応を任せている」と述べたが、その森山裕国対委員長は「(杉田氏に)問い合わせる予定はない」という。野党の批判をやり過ごし、うやむやに終わらせようというのだろう。この政権の下で繰り返されてきた手法を許してはならない。

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