(社説)通常国会開幕 「説明放棄」は許されぬ

社説

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 長期政権のゆがみを正し、政治や行政への信頼を回復するとともに、政策論議を深める。立法府がその本分を果たせるか、まさに正念場である。

 150日間にわたる通常国会が始まった。しかし、安倍首相のきのうの施政方針演説からは、そんな危機感はみじんも感じられなかった。

 東京五輪パラリンピックの話題を随所に織り込み、「新しい時代」へ向けた「夢」や「希望」を語る一方で、「桜を見る会」やカジノ汚職、辞任閣僚の公職選挙法違反疑惑など、政権のうみと言うべき昨年来の問題には一切触れなかった。

 桜を見る会をめぐっては、首相による私物化への批判にとどまらず、招待者名簿の扱いが公文書管理法に違反していたことを政府自身が認めた。「国民共有の知的資源」とされる公文書のずさんな管理は、民主主義の土台を揺るがす。真摯(しんし)な反省や再発防止への決意すら語ろうとしないのはどうしたことか。

 カジノを含む統合型リゾート(IR)への参入疑惑は、内閣府元副大臣の秋元司衆院議員が収賄容疑で逮捕されたほか、中国企業側が他の衆院議員5人にも現金を配ったと供述するなど、広がりを見せている。

 首相は演説で、問題などないかのように「厳正かつ公平・公正な審査を行いながら、複合観光施設の整備に取り組む」とさらりと述べた。政権が成長戦略の柱に掲げるIRの正当性が根底から問われているというのに、これで国民が納得すると思っているのだろうか。

 説明責任をないがしろにしているのは、首相だけではない。

 昨秋、秘書が有権者に香典を渡していた菅原一秀前経済産業相と、参院議員の妻に公選法違反疑惑が持ち上がった河井克行前法相が、ともに辞任に追い込まれた。両氏と河井氏の妻の案里議員はその後、国会を欠席したまま雲隠れを続けていた。

 先週になって、公選法違反容疑で関係先の家宅捜索を受けた河井夫妻が、菅原氏も国会初日のきのう、ようやく記者団の取材に応じたが、いずれも捜査への支障を理由に事実関係に関する説明を拒んだ。これまで機会はいくらでもあったのに、捜査は口実としか受け取れない。

 昨年の通常国会では、参院選への悪影響を懸念した政権の論戦回避が極まり、首相が出席した予算委員会の開会時間は第2次政権下で最短となった。秋の臨時国会も、桜を見る会の追及を振り切るため、政権は幕引きを急いだ。

 あすの衆院の代表質問から国会の論戦が始まる。政権の「説明放棄」を許さぬ、野党の力量が試される。

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