(社説)郵政新体制 問われるのは実行力だ

社説

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 日本郵政グループの新体制が発足した。かんぽ不正で損なわれた信頼を回復し、組織を立て直せるのか。実行力が問われることになる。

 年明けに日本郵政の新社長に就任した増田寛也総務相は、先週の会見で、かんぽ生命の不正販売について、調査対象を広げる意向を表明した。総務省の前次官が総務官僚OBでもある日本郵政の鈴木康雄前上級副社長に、行政処分をめぐる情報を漏らしたとされる問題についても、前経営陣の調査打ち切り方針を覆し、「しかるべき調査を行う」と述べた。

 いずれも当然の判断だ。経営体制刷新の効果があらわれたともいえる。不正の全容を解明して顧客に与えた不利益を解消することは、再生に向けた出発点である。実効的で顧客の立場にたった調査が必要だ。

 一方で、旧郵政官僚の人脈に基づく官民癒着の実態究明は、民営化の途上にある日本郵政の企業統治を是正するうえでも欠かせない。表面的な調査に終わらせず、組織の根本にかかわる問題として臨むべきだ。

 増田氏は「民営化は着実に進めたい」としたうえで、現時点では企業としての成長戦略を打ち出すことより、信頼回復や組織としての足元固めを優先する姿勢を示した。現状では、やむをえない選択だろう。不正が横行し、社内やグループ内で情報共有が滞る組織では、健全な成長も見込めない。

 トップが代わり、一定の方向性が示されたとしても、今後の道のりは多難だ。地域の高齢者からの郵便局への信頼という日本郵政最大の強みを、自ら傷つけたツケはあまりに重い。

 40万人超の従業員を擁するグループで、「創立以来最大の危機」(増田氏)という現状認識をいかに共有するのか。政治を含め様々な利害関係者が錯綜(さくそう)するなかで、組織の再生を具体的にどのように進めていくのか。かけ声倒れに終わらせないよう、新経営陣は自ら現場の実情を把握し、粘り強く取り組まねばならない。

 増田氏は旧建設省出身で岩手県知事も務めたが、上場企業の経営経験はない。かんぽ生命と日本郵便の新社長は旧郵政官僚出身だ。増田氏は「危機管理という意味では官民に大きな違いはない。足りない部分は外部専門家を入れて補う」という。

 外部の目を入れることは必須だが、肝心なのはどう生かすかだ。日本郵政をはじめグループ各社には、すでに多数の社外役員がおり、民間企業の経営者らが名を連ねる。それでも今回の事態は防げなかった。企業統治は形を整えるだけでは機能しないことを、教訓にすべきだ。

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