(社説)総務次官更迭 天下りの弊害が極まる

社説

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 天下りによる官と業の癒着がここまで露骨に表れたことに、がくぜんとする。

 総務省の事務次官が自ら情報漏洩(ろうえい)に手を染め、更迭された。監督対象の日本郵政に天下った「先輩」に、かんぽの不正販売をめぐる処分の検討状況を逐一伝えていたという。

 かつて国営事業だった郵政は2003年に公社化、07年に民営化され、総務省は金融庁とともに監督する立場にある。鈴木茂樹前次官が情報を漏らした相手とされる日本郵政の鈴木康雄上級副社長は、09~10年に総務次官を務めたあと、13年に日本郵政に転じた。

 監督する役所と監督される企業の幹部が通じ、行政をゆがめかねない事態に至ったのは極めて深刻な問題だ。かんぽ不正の被害者、ひいては広く国民への背信と言わざるをえない。

 前次官は情報漏れを認めたとされる一方で、動機は明らかになっていない。鈴木副社長との間にどういう関係があったのか、この件以外に総務省と日本郵政の間で癒着はなかったのか、徹底的に究明しなければならない。

 日本郵政は、かんぽ不正の調査の徹底や再発防止を掲げている。その一方で、こうした手段で処分状況を探ろうとしていたのだとすれば、言動の信用性が土台から揺らぐ。情報漏れについて「事実関係を確認中」としかコメントしていないのも理解しがたい。

 現経営陣は不正の重大性の認識が遅れ、経営責任も明確化できないままだ。ここに至っては、鈴木副社長を含め即刻、体制を刷新するしかない。

 鈴木副社長は、かんぽ不正を報じたNHKに対する郵政側の抗議を主導したとみられる人物だ。NHKの「ガバナンス」を名目に経営委員会を通じて圧力をかけ、その際かつての総務省官僚としての経歴を誇示し、放送法の講釈までしていた。官僚OBの立場の悪用を繰り返していたことになる。

 公務員の再就職やOBによる口利きには一定の規制があるが、今回の事態では癒着を防げなかった。一昨年には文部科学次官が天下りあっせんの責任をとって辞任している。次官経験者などの「大物」が出身官庁への影響力を不当に行使していないか、点検するべきだ。

 民営化の途上にある日本郵政は、政府がなお57%の株式を持ち、取締役の認可権を持つ。かんぽ不正は今後の民営化の道筋にも暗雲を投げかけているが、人事のあり方を含め、政府との関係を透明にしていくことも重要な課題だ。

 総務省、日本郵政とも、根底から体質を改める必要がある。

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