(社説)臨時国会閉幕 政権の専横を忘れまい

社説

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 説明責任を顧みず、論戦から逃げ回る。安倍政権の立法府軽視も極まった観がある。

 臨時国会が閉幕した。野党は「桜を見る会」をめぐる一連の問題を究明するため、会期を40日間延長する動議を提出したが、与党の反対で否決された。

 政治の公平・公正に対する信頼は政策遂行の基礎である。税金で賄われる公的行事を、安倍首相が私物化していたのではないかという疑念を放置したまま、先に進むことはできない。

 首相は本会議などで一方的に弁明することはあったが、一問一答で詰められる委員会質疑に応じることは最後までなかった。参院予算委員会で、自民党出身の委員長が提案した首相抜きでの質疑すら、与党の反対で実現しなかった。異様なまでの論戦回避である。

 この問題の影に隠れた格好になっているが、初入閣から2カ月もたたないうちに辞任に追い込まれた菅原一秀経済産業相、河井克行法相の説明責任と首相の任命責任も、いまだ果たされていない。

 菅原氏には地元の有権者に公職選挙法が禁じる寄付をした疑いが、河井氏には自民党参院議員でもある妻の陣営の選挙違反の疑いが指摘され、国会で野党の追及を受ける矢先に辞表を提出した。その際、両氏とも、「今後、説明責任を果たしていきたい」と述べたが、1カ月以上たった今も、空手形のままである。首相や自民党執行部が、両氏に対し説明責任を果たすよう求めた形跡もない。

 政権にとって都合の悪いデータを国会に出し渋るのも、この政権の常套(じょうとう)手段だ。日米貿易協定の承認手続きは臨時国会最大の焦点だったが、野党が求めた経済効果の試算などは示されず、検討に必要な情報が十分にそろっていたとは言いがたい。成果を急ぐトランプ政権に配慮した来年1月1日発効ありきの審議だったというほかない。

 年間を通してみても、国会をないがしろにする安倍政権の専横ぶりは際立っていた。

 1月に始まった通常国会では、19年度予算が成立してしまうと、行政監視の主舞台でもある予算委の開催に応じず、国会の規則に基づく野党の要求も無視した。夏の参院選をにらんだ失点回避の思惑は明白だった。参院選後も、野党による臨時国会の早期召集要求は店晒(たなざら)しにされた。党首討論は今年は6月の1回きりだ。

 国会を閉じ、年が改まれば、一連の問題も忘れられる――。首相はそう高をくくっているのかもしれない。しかし、政治権力が国民への説明を放棄した先に待っているのは、民主主義の土台の崩壊である。

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