(社説)26兆経済対策 必要性と効果の精査を

社説

[PR]

 大型の経済対策が、なぜ、いま必要なのか。それぞれの政策に緊急性があるのか。費用に見合う効果が期待できるのか。

 こうした疑問への十分な説明もないまま、安倍政権が、事業規模で26兆円の「安心と成長の未来を拓(ひら)く総合経済対策」を決めた。

 「災害からの復旧・復興」「経済の下ぶれリスクを乗り越える支援」「未来への投資と東京五輪後の対策」の三つを柱とする。国と地方を合わせた財政支出は13・2兆円で、「これまでのアベノミクスの成果を前進・加速させる」という。

 政府は、足元の国内総生産(GDP)は「過去最大規模に達し」、10月の消費税増税の影響は「全体として前回ほどではない」との認識を示す。ただ、「海外を要因とした先行きリスクが視界に入りつつある」として、対策は「設備投資や個人消費が下押しされないための万全の対応」との位置づけだ。

 だが、そもそも海外リスクによってどの程度の内需の落ち込みが予想されるのかを、政府は示していない。財政支出によって、将来の成長をどう生み出すのかも、不確かだ。

 際だつのは、規模へのこだわりだ。自民党は「財政の制約で実行のタイミングを逸してはならない」と強調した。首相も「人材への投資や研究開発も、次の世代に残るものだ」として、赤字国債の発行もいとわない姿勢をみせた。

 35ページにわたり記された政策には、次々世代の通信技術となるポスト5Gへの投資や就職氷河期世代への就業支援などに加え、「ラグビーができるスポーツ施設整備」「レジ袋有料化に向けた理解促進事業」なども並ぶ。規模優先で、あれもこれも詰め込んだ結果だろう。

 政権が意義を訴える政策の一つに、小中学校へパソコンやタブレットを1人1台ずつ配る事業がある。経済財政諮問会議で首相が「1人1台は当然ということを、国家意思として明確に示すことが重要」と述べて、対策入りが確定した。総額で4千億円以上を投じ、2023年度までに約900万人の児童・生徒すべての分を配る。

 何を学び、どう子どもの成長につなげるのか。ほかの政策よりも教育現場で優先すべき課題なのか。指導する教員は確保できるのか。ここでも、納得のいく説明は聞こえてこない。

 対策の表題には「安心と成長の未来」とあるが、その道筋はかすんでいる。

 いまからでも遅くはない。それぞれの政策の必要性と効果を精査し、問題があれば見直し、中止も考えるべきだ。実行ありきで突き進んではならない。

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら