(社説)桜を見る会 これで責任は果たせぬ

社説

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 安倍首相はなぜ、一問一答形式の委員会質疑に応じないのか。「桜を見る会」をめぐる一連の疑問について、一方通行の答弁で済む本会議への出席にしか応じないということ自体、説明責任を軽んじる行為と言わざるを得ない。

 首相がきのう参院本会議で答弁にたった。野党は参院規則に基づいて予算委員会の開催を要求している。委員の3分の1以上の求めがあれば、委員長は委員会を開かねばならないと定められているにもかかわらず、与党が応じないのはルール無視もはなはだしい。答弁の矛盾やごまかしを突かれるのが嫌だと見られても仕方あるまい。

 招待者名簿の廃棄をめぐる首相の説明は、野党議員の資料請求とは全く無関係という、政府の従来の立場をなぞるだけだった。一方、電子データの復元はシステム上、不可能と明言した。菅官房長官は先週まで「復元はできない」と言いながら、その根拠は示していなかった。相変わらずの説明の小出しは、不誠実きわまる。

 多くの消費者被害を出したジャパンライフの元会長が、桜の会の招待状を宣伝に使い、首相の推薦枠だった可能性も指摘されている問題については、招待者も推薦元も個人情報だとして「回答を控える」の一点張り。一般論として「会が企業や個人の違法、不当な活動に利用されることは容認できない」と語ったものの、首相との関係を信じて契約した被害者の証言も明らかになるなか、人ごとのような反応ではないか。

 毎年、会の前夜に開いていた後援会の懇親会の会計処理についても、納得のいく新たな説明はなかった。ホテル側と相談した際、費用などの明細書は示されなかったというが、にわかには信じがたい。ホテル側が「営業の秘密」を理由に資料提供に応じないとも語った。政治資金規正法公職選挙法違反の可能性まで指摘されているというのに、本気で疑念を払拭(ふっしょく)するつもりがあるのだろうか。

 今国会は残り1週間。与党は会期の延長はせず、首相の説明もきのうの参院本会議で区切りとしたい考えだという。首相の保身を優先した幕引きなど、決して許されない。

 首相は桜を見る会の運用について「私自身の責任において全般的な見直しを行う」と繰り返し、招待者名簿の保存期間の見直しにも言及した。しかし、政治の公平・公正に関わる重大な問題である。小手先の対応では、信頼回復はおぼつかない。まず、何よりも、さまざまな疑問について、首相が真摯(しんし)に説明を尽くすことが出発点にならなければいけない。

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