(社説)暴力団員射殺 抗争激化をくい止めよ

社説

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 飲食店やマンションが並ぶ市街地で、暴力団間の抗争と見られる殺人事件が起きた。犯行には自動小銃が使われた模様だ。

 市民が巻き添えになっていたらと思うと、恐怖と憤りを禁じ得ない。捜査を急ぐとともに抗争の激化を防がねばならない。

 現場は兵庫県尼崎市阪神電鉄尼崎駅に近い路上で、人通りが多い夕刻に事件は起きた。指定暴力団神戸山口組の幹部が殺害され、対立する指定暴力団山口組の元組員の男を警察は逮捕した。

 男は拳銃と米軍が軍用銃として使うM16系統と見られる自動小銃を持っていた。犯行現場では多数の空の薬莢(やっきょう)や不発弾が見つかった。入手経路や組織の関与の解明が当面の焦点になる。

 日常の生活の場で殺傷能力が高い凶器が使われたことに近隣の住民は衝撃を受け、不安が広がっている。小学生の登下校に保護者が付き添うなど対策に追われており、まずは住民の安全に万全を期さねばならない。

 県警は組の事務所など関係先に十分な要員を配置してほしい。山口組をめぐっては過去の対立抗争で市民が巻き添えになり、死傷者を出した。悲劇を二度と繰り返してはならない。

 今回の事件の背景にあると見られるのが、4年前に始まった山口組の分裂だ。一部幹部らが離脱して神戸山口組を結成し、2年前には神戸山口組を抜けた勢力が新たに任侠(にんきょう)山口組を作った。三つの組織がからむ対立の構図が続いている。

 今春からは山口組と神戸山口組の間で傷害事件が相次ぎ、10月には「神戸」系組員2人が射殺されて山口組系組員が逮捕された。その後服役していた山口組ナンバー2の幹部が出所し、抗争に拍車がかかりかねないと懸念されていた中で、また事件が起きた。

 二つの組に対しては兵庫、大阪、岐阜、愛知の4府県の公安委員会暴力団対策法に基づき、双方の本部を含む19カ所の事務所の使用制限を命じて立ち入りを原則禁じている。この対象を広げるほか、より規制が厳しい「特定抗争指定暴力団」への指定も検討課題となる。定められた警戒区域内で組員が5人以上集まると逮捕できるなど、行動を厳しく制限できる。

 暴力団勢力は取り締まりの強化や社会の排除運動で減少傾向にあり、18年末で3万500人と5年間に半減した。しかし暴力団がからんだ特殊詐欺など被害はなお後を絶たない。

 警察の取り締まりとともに、構成員が社会に復帰するのを支援する取り組みも充実させる。暴力団をけっして許さないという決意を新たにし、社会全体で対策を重ねていく必要がある。

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