(社説)岩国の米軍機 安全確保の約束果たせ

社説

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 山口県の米軍岩国基地で信じ難い規律違反が横行していた。

 戦闘機部隊の隊員が、操縦中に本を読んだり、酸素マスクを外して「自撮り」をしたりしていたことが明らかになった。薬物の乱用やアルコールの過剰摂取も発覚したという。安全意識の欠如に言葉を失う。

 きっかけは、昨年12月に戦闘機と空中給油機が訓練中に接触し、高知県沖に墜落した事故だった。今年9月にまとまった海兵隊の調査報告書は、背景にこうした緩みがあったと指摘し、隊長ら4人が更迭された。他の部隊にも同様の問題はないか、早急な点検を求める。

 米軍再編に伴い岩国基地には昨年春までに、神奈川・厚木基地から約60機の空母艦載機が移駐した。所属の米軍機は120機を超え、極東最大級の沖縄・嘉手納基地と並ぶ規模だ。

 騒音の発生回数は移駐前から倍増した。特に横須賀から空母が出港するときは、深夜の発着が多発する。加えて今回の不祥事に、市民たちから憤りの声があがるのはもっともだ。

 岩国市では06年に艦載機移駐の賛否を問う住民投票があり、反対が約9割を占めた。だが受け入れを拒んだ市長は、国から補助金を凍結されるなどした末に落選。代わった現市長が17年に容認を表明した。

 その際、安倍政権は騒音防止や安全確保の徹底を約束した。米国側から実効性のある再発防止策を引き出す責務がある。

 調査報告書には、16年4月にも同型の2機が沖縄県沖で接触事故を起こしていたことが書かれていた。日本側は発生の事実を知らされていなかった。

 在日米軍の事件・事故については、「公共の安全または環境に影響を及ぼす可能性がある」場合、できる限り速やかに通報するとの合意が、97年に日米間で取り交わされている。

 河野太郎防衛相は、16年事故の連絡がなかったことを「ルール違反だ」と述べた。当然の批判だが、通報の範囲や時期は米軍の裁量に委ねられているのが現実だ。最近も米軍は、沖縄を対象とする別の日米合意に反して、嘉手納基地でパラシュート降下訓練を強行している。

 河野氏が由々しき状態と本気で考えるなら、こうした米軍の不誠実を厳しく問いただし、合意事項の解釈の明確化、場合によっては内容や文言の見直しにまで踏み込むべきではないか。

 社説で繰り返し指摘するように、問題の根底に日米地位協定がある。事故の捜査や調査に日本が関われるようにするなど、より対等な関係に向けた改定が不可欠だ。米軍機は基地周辺だけでなく、日本各地の空を飛ぶ。決して他人事ではない。

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