(社説)首相国会答弁 「任命責任」は口だけか

社説

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 就任間もない重要閣僚の連続辞任という異例の事態を、どこまで深刻に受け止めているのか。安倍首相が認める「任命責任」は口だけと言うほかない。

 衆院予算委員会の集中審議がきのう開かれた。菅原一秀経済産業相と河井克行法相の辞任を受け、首相がどんな見解を示すかが最大の焦点だった。

 両氏には閣僚としての資質を危ぶむ声があったが、首相は「適材適所」の任命だったと強調。辞任という結果に「責任を痛感している」としながら、その責任の果たし方については「行政を前に進めることに全力を尽くす」の一点張りだった。

 辞任の理由となった疑惑について、両氏はいまだ公に説明していない。指導力を発揮するよう求める野党に対し、首相は「政治家として自ら説明責任を果たすべきだ」と、本人任せに終始した。これではとても、首相のめざす「国民の信頼回復」にはつながるまい。

 そもそも、2012年の政権復帰以降、疑惑や失言などで辞任した閣僚は10人にのぼる。真に反省し、教訓をくみ取っていれば、事態はこれほど繰り返されなかったはずだ。

 ひとごとのような答弁は、大学入学共通テストへの英語民間試験の導入見送りにも共通する。妥当ではあるが、遅すぎた決断に、多くの受験生や保護者、高校の教員らが振り回された。にもかかわらず、首相は「萩生田光一文部科学大臣の判断」と述べるだけで、政権全体としてこの問題を引き受ける姿勢は見られなかった。首相の設けた教育再生実行会議が6年前に方向性を決めた「改革」であるにもかかわらずである。

 加計学園の問題を追及する野党議員に対し、首相が自席からヤジを飛ばし、騒然とする場面もあった。首相のヤジはいまに始まったことではないが、政権の政治姿勢が問われている集中審議のさなかに、不見識きわまるふるまいである。

 野党側は、辞任した2閣僚の参考人としての出席を求めていた。両氏とも国会で予定されていた質疑を前に辞表を提出し、何ら疑問に答えていないのだから、当然の要求だ。ところが、与党側は「前例がない」として取り合わなかった。それどころか、自民党の質問者は両氏を「見識、人物ともに信頼できる方」と持ち上げるありさまだ。

 安倍政権では、疑惑をもたれて要職を辞した政治家が、その後、説明責任を果たさぬまま、復権を果たす例が相次いでいる。今回の連続辞任も、しばらくすれば国民は忘れてくれるだろうと高をくくっているのだとしたら、同じ過ちが繰り返されてもおかしくはない。

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