(社説)中国4中全会 一党支配の矛盾直視を
中国を統治する最善のシステムとは何か。そんな深遠なテーマを主題として、中国共産党の最高機関が議論した。
北京で先日あった党中央委員会の第4回全体会議である。略して4中全会と呼ばれ、ベールに包まれたまま数日続き、最後にコミュニケが発表された。
答えは、相変わらずだった。共産党支配の優位性がたたえられ、「堅持」という言葉が57回も繰り返された。今の一党支配体制を堅持し、その制度化をさらに進めるのだという。
要約すれば、こうだ。共産党の一党支配は何ら間違っていない。統治はうまくいっている。だからこのままでいく――。
およそ首肯できない結論だ。一党支配による矛盾は陰に陽に多くの問題を生んでいる。それが本当に中国の安定した発展につながるとも思えない。
中国共産党は憲法で国家機関を超越した存在とされ、全権をにぎっている。集中された権力体制がこの間、国の開発を効率よく進め、グローバル化経済の波にも乗って急速な発展を遂げたことは否定できない。
しかし一方で、自由や人権といった普遍的な価値観が顧みられることはなかった。抑圧を正当化してきた経済成長も、今では勢いに陰りが見えている。
中国国内の格差は深刻化している。都市部の市民が求めるものも、経済的な豊かさにとどまらない多様化をみせている。
この重い変化のなかで中国に必要なのは、強権ではない。多様な国民のニーズに目配りし、均衡ある分配を経済と市民的権利との両面で進める寛容な統治が求められている。
歴史を振り返れば、おびただしい死傷者が出た文化大革命をはじめ、共産党政権は悲惨な過ちを繰り返してきた。その教訓から、毛沢東の死後、党は指導者の終身制を否定して任期を導入したり、集団指導体制を唱えたりしてきた。
ところが習近平(シーチンピン)氏は昨春、歴史の針を逆戻しするかのように国家主席の任期を撤廃した。習氏への忠誠度を試すなど、個人崇拝につながりかねない動きも際立たせている。
言論を封じ、体制批判を許さない。ネット情報の管理や顔認証などにより、個人の暮らしと言動を当局が把握し、取り締まる。AI技術を駆使した中国式の監視社会が、世界に広がることへの懸念も強まっている。
そもそも一党支配においては政治の過ちを正す道が、党内の権力闘争以外にない。共産党はその脆弱(ぜいじゃく)さを直視すべきだ。
自由な民意の受け皿となる体制改革を進め、人権軽視を早急に改める。それが今の中国が追求すべき統治であろう。
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