(社説)閣僚連続辞任 長期政権の緩み極まる

社説

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 内閣改造から2カ月もたたないうちに、重要閣僚が相次いで辞任に追い込まれた。「安定と挑戦」を掲げた人事の失敗は明らかだ。安倍首相は、政権全体への信頼を揺るがす事態であると重く受け止めねばならない。

 先週の菅原一秀経済産業相に続き、今度は河井克行法相が辞表を提出した。きのう発売の週刊文春が、妻で自民党参院議員の案里(あんり)氏の陣営の選挙違反疑惑を報じたためだ。

 案里氏は7月の参院選広島選挙区で初当選した。文春によると、その際、選挙カーでマイクを握る運動員に対し、法定上限の倍にあたる3万円の日当を支払いながら、領収書を二つにわけて経理処理をするというごまかしをしていたという。

 事実なら、公職選挙法が禁じる運動員買収にあたり、候補者本人が承知していなくても、連座制の対象となる人物の有罪が確定すれば、当選が無効になる。議員の身分にかかわる、ゆるがせにできない疑惑である。

 ところが、案里氏は事務所の運営はスタッフに任せていたとして、「事実関係の把握に努めたうえで、説明責任を果たしたい」とのコメントを発表して終わり。夫の克行氏も記者団に「私も妻もあずかり知らない。法令にのっとった活動を行っていると信じている」などと短く語るだけだった。

 きのうは参院法務委員会で克行氏への質疑が予定されていた。報道直後のスピード辞任は、国会での追及を逃れるためではなかったか。同様に衆院経済産業委員会を前に辞任した菅原氏は、その後1週間たつが、いまだに公の場で疑問に答えていない。

 甚だしい説明責任の軽視は、首相自身にもいえる。閣僚辞任という重大な場面にもかかわらず、その説明は会見ではなく、記者団との「立ち話」。「責任を痛感」「国民に心からおわび」というが、2012年の政権復帰以降、疑惑や失言などによる閣僚の辞任は10人目である。これだけ繰り返されると、首相の反省がどこまで本気か疑わしいと言わざるを得ない。

 克行氏をめぐっては、秘書への暴行やパワハラセクハラの疑いが週刊誌で報じられ、閣僚としての資質を危ぶむ声があった。にもかかわらず、首相は法務・検察をつかさどる法相につけた。選挙区内での贈答疑惑を指摘されていた菅原氏の起用と併せ、長期政権のおごりと緩みが極まった感がある。

 首相が本当に任命責任を感じているというのなら、まずは野党が要求する予算委員会の集中審議に応じるべきだ。自ら説明の先頭に立つことなしに、信頼回復への歩みは始まらない。

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