(社説)台風19号被害 救助も被災者の支援も

社説

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 東北、関東などを襲った台風19号は、15日で上陸から3日がたったが、被害の全容はなお見えない。死者・行方不明者は80人を超え、浸水などの被災家屋は2万棟以上にのぼる。

 当面は人命の救出に力を尽くし、被災者のケアを並行して進めることが肝要だ。夜を徹しての救助活動は危険を伴う。自衛隊や消防は安全に気を配りながら作業を続けてほしい。

 今回の災害の特徴は、河川氾濫(はんらん)が広範囲に及んだことだ。

 堤防の決壊は、長野の千曲川や福島の阿武隈川など、7県で70カ所以上も発生した。東京でも多摩川があふれたほか、宮城などでも大規模浸水や土砂災害が相次いだ。

 1、2級河川だけで約2万1千本ある日本は昔から水害多発国だ。国は大河川では、100~200年に1度発生する規模の降雨を念頭に、治水事業をすすめてきた。国が整備を終えた堤防の延長は9千キロに達する。

 それでも近年は想定を超す雨が頻発し、昨年の西日本豪雨、一昨年の九州北部豪雨、15年の関東・東北豪雨では多くの犠牲者が出た。経験したことのない雨にどう対処すべきか。堤防などハードの整備だけでなく、避難訓練の徹底や情報の早期周知など、ソフト面の対策を組み合わせた防災のあり方を、地元自治体を中心に練り直すべきだ。

 今回、水が襲った被災地の多くは、自治体が公表しているハザードマップで浸水想定地域に指定されていた。西日本豪雨でも指摘されたことだが、自分の住む地域の特性をふだんから知っておくことが大切だ。

 心配なのは避難所で寝泊まりする人の健康だ。政府は省庁横断の「被災者生活支援チーム」を発足させた。過去の災害で培った教訓を生かす時である。

 政府の中央防災会議の作業部会は3年前、災害時の生活支援策のあり方をまとめている。避難生活で体調を崩す人が相次いだ熊本地震での反省を踏まえたものだ。避難所は、女性や乳幼児のいる世帯に配慮したレイアウトにする▽指定避難所以外にいる被災者の所在とニーズを把握するため、医師ら専門家と協力する――などだ。

 災害によって事情は異なるが、混乱で行政の機能が低下することは共通する。被災した市町村に国や都道府県が人を派遣する場合は、人員を統括できる要員も加え、応援側が自己完結できる態勢をとることが求められる。ニーズを丁寧にくみ取り、長期的な視点で支援に努めてほしい。

 今週末には再び激しい雨が降るとの予報だ。警戒をとかず、被災地以外の人もわがことと考え、備えを点検しておこう。

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