(社説)被災住宅支援 根本から見直す機会に

社説

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 政府は、台風15号で一部損壊した住宅の修理費を、特例として国費で支援すると発表した。被害の多くを占める瓦屋根が対象で、千葉県内の自治体が支出する補助金の9割を負担する。

 今回の台風では、住宅被害の9割が「一部損壊」とされた。災害救助法にもとづく応急修理支援は「半壊」と「大規模半壊」に限られるため、拡大を求める声が出ていた。

 被災者の生活再建を助け、地元自治体の負担を軽減する施策であり、一歩前進といえよう。修理に要した費用の何%まで補助するかやその際の上限額は、今後、被災自治体が決める。

 大切なのは、実態を踏まえた救済策を講じることだ。

 たとえば、壊れた屋根から雨水が入りこみ2階部分が使えなくなった家の場合、建物としては一部損壊でも、住み続けるのは困難な例が少なくない。法令をしゃくし定規に当てはめて判断せず、市町村は丁寧に被害を確認する必要がある。

 被災地では台風が通過した後も強い雨の日が続いた。内閣府は、認定にあたってこうした事情も考慮するよう自治体に通知を出した。職員を市町村に派遣するなどして、適切な業務の遂行をサポートしてほしい。

 一部損壊の住宅が国の救済対象になっていない問題は、繰り返し指摘されてきた。

 昨年の北海道地震では約1万2600棟が一部損壊とされ、道は修理費を独自に補助することにした。大阪北部地震関西地方を襲った台風21号でも同様の事態が生じ、複数の自治体が費用の一部を補助する仕組みを設けた。

 今回、国が乗り出したのは評価できるが、「特例」という扱いでは国民の間に不公平感を生みかねないし、次に災害が起きたときはどうなるのか不安も残る。自治体の規模や財政力によって扱いに顕著な差が出るのも、好ましい話ではない。

 これを機に、災害発生後に最低限の生活再建を保障するにはどんな支援や補助が必要か、議論を深め、制度の抜本的な見直しにつなげてはどうか。

 衆議院は来月1日に災害対策特別委員会を開く。台風襲来前後の政府の対応を検証するとともに、議員の間で問題意識の共有を図ってほしい。委員会は別だが、被災者生活再建支援法の改正案も継続審議になっている。全国の知事らの要望を受けて、支援金額を引き上げ、支給対象も全壊・大規模半壊から半壊にまで広げることを検討するよう政府に求めるものだ。

 この国に住むかぎり災害は避けられず、しかも激甚化する傾向にある。その前提に立って安全網を設計し直すべきだ。

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