(社説)台風被害 鉄道、空港に課題残し

社説

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 台風15号は強風や雨の被害を首都圏各地にもたらした。鉄道各社は運転を事前に見合わせる「計画運休」を実施したが、再開時に駅に人があふれるなどの混乱を招いた。安全・円滑な運用に向けて課題を洗い出し、次への備えとしてほしい。

 関東での大規模な計画運休は昨年9月以来2回目。今回は多くの鉄道会社が前日から運転取りやめを決めた。早めの発表は評価されてよい。問題は、台風が通過した後に起きた。

 JR東日本は前夜から翌朝まで「午前8時ごろまで運転を見合わせる」と説明していたが、強風が長引き、再開はずれ込んだ。その結果、「8時」を頼りに駅に向かった多くの人で身動きできない状況に陥った。私鉄でも同様の事態が起きた。

 正確な予測は確かに難しい。それでも、もっと幅をもたせた告知をしたり、報道機関やSNSを通じて最新の状況をきめ細かく発信したりするすべはなかったか。出し手と受け手の双方が、どの程度の確度の情報かを共有することが、こうした混乱の回避には欠かせない。

 国土交通省は7月、計画運休に関する指針をまとめ、鉄道会社に対し、作業手順の整理や他社線との連携強化などを要請した。各社の担当者を集め、情報の出し方をはじめとして、うまくいった点、改善すべき点を持ち寄り、練度を高める必要がある。混雑した駅構内では電波障害も起きていた。通信インフラの整備も課題になろう。

 利用者や企業の理解も求められる。在宅勤務に切り替える、休暇扱いにするなど、状況に応じた柔軟な措置が混雑緩和につながる。昨年、大きな台風が襲った関西でも指摘された話だ。

 混乱したのは鉄道だけではない。成田空港東京都心へのアクセスが遮断され、1万数千人がターミナルビルで一夜を明かした。各言語での案内・対応は十分とはいえず、大勢の外国人客が途方に暮れていた。

 ラグビーW杯が間近に迫り、来年には東京五輪パラリンピックも開かれる。危機管理に大きな不安を残した。

 少し離れた私鉄駅は夕方には運行を再開していた。使えるバスの運用を見直し、乗客をピストン輸送するなどの手当ては難しかったのだろうか。着陸予定の航空機を他の空港に振り向けることなどともあわせ、空港運営会社と航空会社とで非常時の対策を練り直してもらいたい。

 千葉県を中心に、多くの家庭が台風禍による停電や断水に見舞われている。この季節、長引けば命に関わる。それぞれの現場で対応を急ぎ、教訓をくみ、被害を最小に抑えねばならない。台風シーズンはまだ続く。

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