(社説)参院選 脱炭素政策 変革への意欲はあるか

社説

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 来年から、地球温暖化対策の国際ルール・パリ協定が始まるのを前に、世界の脱炭素化が加速している。

 再生可能エネルギー発電の設備容量は一昨年までの10年間で倍増し、すでに総発電量の4分の1を超えた。石炭火力発電二酸化炭素(CO2)の排出量が多く、先進国では全廃や縮小をめざす動きが相次ぐ。

 日本も自らの目標を達成できるよう、温室効果ガスの削減に本気で取り組まねばならない。そのために必要なのは、社会や経済の思い切った変革だ。参院選では、脱炭素化への与野党の覚悟と意欲が問われる。

 これまで安倍政権のもとで打ち出されてきた各種の政策で、日本の脱炭素化を加速させられるのかは心もとない。

 たとえば昨年のエネルギー基本計画は、2030年度の電源構成で再エネを22~24%しか見込まず、石炭火力を26%も残すとしている。これに縛られたままでは、閣議決定した「50年までに80%排出削減」という目標にたどり着くのは難しい。

 政府は先月、この目標に向けたシナリオである長期戦略を国連に提出した。目標を達成した後、今世紀後半のできるだけ早期に排出ゼロの脱炭素社会をつくるとしている。

 だが、将来の不確かな技術革新に過度な望みをかけ、炭素税排出量取引などのカーボンプライシングのように、いま実行できる対策からは逃げている。説得力に欠ける戦略である。

 それでも与党は、このシナリオに沿って進めばいいとの考えだ。脱炭素化を急がねば、という危機感は感じられない。

 それを象徴するのが石炭火力への姿勢である。

 日本には多くの新増設計画があり、「CO2削減に後ろ向きだ」と海外では評判が悪い。なのに与党は産業界の意向を尊重し、石炭火力からの撤退を視野に入れていない。大胆な政策転換に背を向けていては、世界の流れに取り残されてしまう。

 選挙戦の前半では、気候変動や温暖化をめぐる論戦は活発ではなかった。しかし野党には脱石炭に前向きな声があり、与党との対立軸として訴えられるはずだ。「30年までに石炭火力全廃」を公約に掲げる立憲民主党は、野党第1党として安倍政権の姿勢をただしてほしい。

 近ごろ、世界のあちこちで異常気象自然災害が相次いでいる。このまま温暖化が進めば、くらしに深刻な影響が及ぶことを忘れてはならない。次世代に重いツケを回さぬよう、いま対策を急ぐ必要がある。

 与野党どちらに脱炭素社会をめざす意気込みがあるのか、しっかり見極めたい。

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