(社説)続く少子化 政策のズレ見直しを

社説

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 1人の女性が生涯に産むと見込まれる子どもの数を示す合計特殊出生率が昨年、1・42と前年より0・01ポイント下がった。3年連続の低下だ。

 安倍首相が少子高齢化を「国難」と呼んだ衆院解散から約2年。国民の希望がかなった場合に見込まれる出生率「希望出生率1・8」の実現を掲げて対策を進めても、少子化に歯止めがかからぬ現実を示す数字だ。

 これまでの政策に何が足りないのか。現場のニーズとズレが生じていないか。中身、優先順位を点検し、実効性ある支援となるよう見直すべきだ。

 出生率は05年に1・26まで落ち込んだ後、保育サービスの拡充に景気回復も重なり、15年に1・45まで回復した。しかしその後、再び低下している。晩婚化、晩産化の傾向も変わっていない。結婚、出産をためらう若い世代への支援、子育てと仕事を両立できる環境の整備を急がねばならない。

 政権が、これまで手薄だった若者支援の目玉に据えるのが、3~5歳児の保育園・幼稚園の費用無償化だ。10月から実施の予定だが、課題が多い。

 経済的な事情で結婚、出産に二の足を踏む若者は確かに少なくない。しかし認可保育園では、利用料は所得に応じた負担となっており、無償化で恩恵を受けるのは比較的所得の高い層だ。年収300万円未満の20~30代の既婚率が10%に満たないという現状を踏まえた、効果的な支援とは言い難い。

 そもそも、子育て世代の当事者からは「無償化より、まず待機児童の解消を」との声が上がる。誰もが確実に子どもを預けられるようにしてほしい、という切実な願いだ。

 出生率の改善に成功したフランススウェーデンは、保育サービスの充実や子育て世帯への手厚い支援に加え、男性の育休推進などにも力を入れてきたことで知られる。

 日本では男性の育休取得率は約6%と際立って低く、期間も短い。男性も育児を担うのが当然という社会の実現には、職場の環境も変えねばならない。

 安倍政権働き方改革として、先進諸国の中で突出して長い労働時間の是正に取り組んでいる。4月からは罰則付きの残業時間規制も始まった。

 だが、残業時間の上限は労災認定の目安とされる「過労死ライン」ぎりぎりだ。仕事と生活の調和がとれた職場を広げるには、さらに踏み込んだ取り組みが求められる。

 国家のために子どもを産むのは当たり前、子育ては女性の仕事と言わんばかりの自民党議員の失言も後を絶たない。そんな意識との決別も必要だ。

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