(社説)麻生氏の責任 立法府が正せぬならば

社説

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 立憲民主党国民民主党などが衆参各院に出した麻生財務相兼金融相に対する不信任決議案問責決議案が、きのうの各院の本会議で自民、公明、日本維新の会などの反対多数で否決された。

 麻生氏に対しては、財務省の公文書改ざんや前財務事務次官のセクハラ問題への不適切な対応などから、朝日新聞は社説で繰り返し辞任を求めてきた。きのうの参院本会議でも、野党議員が「行政府に問題があれば、それを正すのが立法府の義務だ」と訴えたが、与党側は数の力ではねつけた。

 こうなれば、麻生氏をかばい、続投させている安倍首相の姿勢とともに、有権者がこれに対する審判を参院選での一票で示すしかない。

 野党が決議案を出した直接のきっかけは、老後の生活費が2千万円不足するとした金融庁の審議会報告書の受け取りを麻生氏が拒否したことだ。野党側は、役所として議論を頼んでおきながら、内容が気に入らないから受け取らないというのは「前代未聞の暴挙だ」と批判している。

 閣僚の資質に欠ける麻生氏の言動は今に始まったものではない。最も重大なのは、財務省の公文書改ざんへの対応だ。

 首相の妻昭恵氏が一時、名誉校長を務めた森友学園との国有地取引に関する文書を財務省が組織的に改ざんしたのは未曽有の不祥事だ。だが、財務省はおざなりな調査で、なぜ8億円も値引きされたのかという核心部分を解明しないまま、国有財産を所管する理財局の当時の局長らを処分して幕引きを図った。

 この局長を国税庁長官に起用し、「適材適所」と強弁していた麻生氏は閣僚給与を返納したが、政治責任をとることなく財務相の地位にとどまった。

 前財務事務次官の女性記者へのセクハラが発覚すると、「セクハラ罪という罪はない」などと前次官をかばったり開き直ったりする発言を繰り返した。

 野党の問責決議案への反対討論で自民党議員は、麻生氏が公文書改ざん事件後は「財務省全体の意識改革、信頼回復に努めている」と擁護したが、財務省にとどまらず行政全体への信頼を壊し続けているのは麻生氏その人ではないか。

 おりしも、財務相の諮問機関である財政制度等審議会が19日に麻生氏に提出した建議で、原案にあった「将来の年金給付水準の低下」や「自助努力が重要」との文言が削られていたことが新たにわかった。この間の詳しい経緯は明らかでないが、審議会の委員や事務方に忖度(そんたく)が働いていたのだとしたら、麻生氏の罪はますます重い。

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