(社説)日米首脳会談 通商の「暴走」は許せぬ

社説

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 トランプ米大統領が来日し、日米首脳会談があす開かれる。3カ月連続となる会談の2回目で、二国間の貿易交渉も議題となる見通しだ。

 トランプ氏は大統領に就任以来、自由貿易をふみにじるような行動を繰り返してきた。安倍首相は、その非を厳しくとがめ、改めさせなければならない。ゴルフや大相撲観戦をともにし、親密な日米関係をアピールするだけでは困る。

 焦点の一つは自動車だ。トランプ政権は先日、日本などからの輸入車が「米国の安全保障を脅かしている」と結論づけた。そのうえで、輸入車に追加関税をかけるかどうかの判断は、11月中旬まで先送りした。

 筋違いも甚だしい。一般の国民も使う自動車と安全保障がどう関係するのか。しかも日本は同盟国である。

 トヨタ自動車の米国法人が「私たちは米国の人々の暮らしや経済に大きく貢献しており、国家安全保障上の脅威ではない。輸入制限が雇用や経済に逆効果であることは、歴史が示している」とすぐに反論したのは、もっともだ。

 仮に追加関税や数量規制がとられれば、日本の自動車業界、そして経済全体に与える影響は計り知れない。

 そもそも昨年9月の首脳会談で、二国間での協議中は「共同声明の精神に反する行動を取らない」ことに合意している。「安全保障」を理由とした自動車への追加関税は「適用しないことを確認した」と、日本側は説明していた。

 今回の米政府の動きは、首脳会談での約束が守られる保証はないことを示した。安倍首相は、厳しく抗議の意を示す必要がある。

 トランプ政権は多国間の通商の枠組みを嫌い、世界一の経済力と軍事力を背景に、二国間協議で自国の利益を追求しようとしている。交渉では相手国の妥協を引き出そうと、制裁をちらつかせるのが常套(じょうとう)手段だ。

 日本との関係でも、日米が中心になってまとめた環太平洋経済連携協定(TPP)から一方的に離脱し、すでに鉄鋼などには「安全保障」を理由に、追加関税をかけている。

 いまの二国間交渉を、米国のペースで進める必要はまったくない。「まだかなりの開きがある」という農産物の関税などについて、日本の立場を明確に主張すべきだ。

 米国のふるまいは自由貿易の国際ルールを逸脱していることを指摘し、修正を求める。「自由貿易の旗手」をうたう首相は毅然(きぜん)と向き合ってほしい。トランプ氏の「暴走」を、これ以上許すわけにはいかない。

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