(社説)インドの政治 13億人の公平な発展を

社説

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 人口はすでに13億を超えている。数年のうちには中国を抜き、世界一になると予想されるのがインドだ。その大国のかじ取りを現職のモディ首相がさらに5年続けることになった。

 23日に開票された総選挙で与党連合が圧勝を確実にした。堅実な経済に加え、隣国との争いやテロなどの危機を訴える戦略が効いたとみられる。

 今年はカシミール地方の領有権を争うパキスタンへの空爆に踏み切った。そうした行動を背に「強い指導者」を強調した訴えには危うさがつきまとう。

 互いに核兵器を持つ両国には厳格な自制が必要だ。パキスタンのカーン首相は対話を呼びかけている。インドの安定した政権基盤が確保されたいまこそ、雪解けの模索を望む。

 5年前にモディ氏が首相に選ばれたときは、経済が争点だった。州の首相として経済を発展させた実績を持つモディ氏は就任後、税制の見直しや投資環境の整備などを進めた。前政権にくらべ成長率は1~2ポイント高い7~8%を記録している。インフレも低い水準だ。

 それでも昨年末の州議会選で与党は連敗した。成長の果実が国民全体に行き渡らず、農村は疲弊しているなどとの批判が一定の支持を集めたからだ。モディ氏が今回の総選挙では経済より安全保障を前面に押し出した理由とされる。

 格差の問題から目をそらすことはできまい。世界銀行の定める貧困層はインドに1億7千万人以上いて、世界の貧困層の4分の1を占める。広大な国家にとって容易でないのは理解できるが、公平な富の分配に努力してほしい。

 中国経済が減速するなかで、インドが均衡ある発展をとげ、安定した社会を維持できるかどうか、世界が注目している。

 その点で、モディ氏の属するインド人民党の掲げるヒンドゥー至上主義が懸念される。人口の8割はヒンドゥー教徒で、イスラム教徒への暴力事件などが相次いでいる。いまも残る身分階層で最も低いとされる「ダリト」への差別も深刻だ。

 今年3月の国連人権理事会では、「不平等が深刻で、少数派への迫害が増えている」と報告された。分断政策は経済発展を阻害するという報告の指摘を重く受け止めるべきだ。

 モディ氏は日米豪との関係を強める一方、中国やロシアとも首脳会談を行うなど、偏らない外交姿勢を見せている。

 安倍首相はモディ氏と12回会談するなど関係を深めてきた。中国への牽制(けんせい)という目先の利益にのみとらわれることなく、幅広い国際秩序の安定に役立つ日印関係をめざすべきだろう。

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