(社説)日産新体制 難局を乗り切れるのか

社説

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 日産自動車が6月以降の経営陣の顔ぶれを固めた。社外取締役を大幅に増やす一方、西川(さいかわ)広人社長兼CEOは続投する。大株主である仏ルノーの会長とCEOも、取締役に名を連ねる。

 日産の経営は大きく揺れている。カルロス・ゴーン前会長が社内から告発されるかたちで東京地検に逮捕・起訴されただけではない。18年度の決算は前年度より大幅な減益になり、19年度の見通しも低調だ。22年度までの中期経営計画の目標値も引き下げた。ルノーとの間では、資本関係をめぐる意見の相違も表面化している。

 新体制はこうした難局を乗り切り、新たな展望を切り開くという重責を担う。企業統治強化の「かたち」は整ったが、トップの続投がふさわしいことなのか、疑問が拭えない。

 現経営陣は東京地検の捜査と歩調を合わせ、ゴーン前会長を会社から追放した。業績悪化も、北米市場などでの「前会長の拡大路線」の失敗が主因だと強調している。だが、西川氏自身、前会長体制を支える一人だった。05年に取締役副社長に就き、11年からは代表取締役、17年4月から社長兼CEOを務めている。

 前会長を「重大な不正があった」と指弾するが、経営幹部としてそれを見逃してきた責任は免れない。日産は法人としても、金融商品取引法違反の罪で起訴されている。

 経営不振も、前会長に責任を押しつけて済む話ではない。17年秋に中期経営計画を発表した社長は西川氏である。現実を直視して見直すのは当然としても、わずか1年半で売上高や利益率の目標を引き下げるに至ったことの責任は重大だ。トップとして、納得を得られる説明ができているだろうか。

 日産では最近まで検査をめぐる不正が横行し、経営が生産現場の実態を把握できていないことも明らかになった。今の幹部はその責任も負っている。

 今後はガバナンス改革、組織改革に加えて、事業改革に乗り出すという。「新商品、新技術を軸にした着実な成長」への転換を掲げるが、具体像は見えにくい。

 新体制は、取締役数で日産とルノーの微妙なバランスをとった。西川氏は、ルノー側が狙う経営統合を否定する一方、「今は議論をするときではない」ということでルノー側と一致しているというが、不安定な状態である。両社の間の駆け引きに労力をとられるようでは、経営再建はおぼつかない。

 激変期にある自動車業界で、社会にどのような価値を提供する企業として生き残っていくのか。不安の残る船出である。

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