コウを残した 第43期囲碁名人戦七番勝負 第2局第6譜
第2局第6譜(113―123)
白 名人 井山裕太(1勝0敗)
黒 挑戦者 張栩(0勝1敗)
(6目半コミ出し)
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名人の持ち時間は残り3時間を切った。挑戦者はまだ5時間以上残している。
「なるほどねえ」。挑戦者はつぶやきながら左辺を見つめる。白14のケイマは、上辺の黒をにらみながらAの割り込みを狙っている。「厚い手だね。打たれていやだった」と局後に明かした。
23分の考慮で黒15、17と白の形を崩しながら左辺を守る。すぐに参考図白1から逃げて15と取りにいくのは、黒16から攻め合い負け(13、19ツグ)。
「わからんことをやってしまいましたか」。名人のぼやきも激しくなってきた。
白20に黒21と受けられると、にわかに△が心細い。検討陣は白Bの動きだしを予想したが、22の様子見はだれの発想にもなかった。
生きるだけなら黒Cで簡単だが、へこむのは悔しい。今なら黒23とオサえて頑張るだろう。この交換により白C、黒D、白Eのコウの手段が残った。後からでは白22に黒Cと我慢される可能性がある。
「絶妙なハネでしたね。ちくちく攻めてポイントを挙げる。張栩さんのお株を奪うような名人の打ち回しだね」と羽根泰正立会人。(内藤由起子)
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消費 黒 3時間38分
白 6時間10分
(持時間各8時間)