「限界集落」から「現代集落」へ 能登の被災地で挑む半自給自足の家

有料記事

上田真由美

 「限界集落」を「現代集落」へ――。過疎が進む能登半島で、土地に根付いた暮らしにほれ込んだ人たちが進めてきた実験的な取り組みが注目されている。昨年元日の能登半島地震と9月の豪雨を経て、エネルギーや水を半自給自足する「モデルルーム」が完成し、26日に地域住民へお披露目される。

 能登半島、北西側の海岸沿い、石川県珠洲市真浦町。のどかな田園風景に奥能登らしい黒瓦の家々が並ぶが、昨年9月の豪雨で被害は拡大し、1年4カ月にわたり断水が続き、いま住んでいる人はいない。

 このうちの1軒の住宅が3月末、モデルルームに生まれ変わった。家の横には太陽光パネルと太陽熱温水器が設置され、電気と温水をまかなう。リビングの薪(まき)ストーブはその部屋を暖めるだけでなく、薪ストーブで温めたお湯が配管を通じて隣室の温水暖房パネルに循環する。生活用水は、沢水や井戸水を専用の濾過(ろか)装置を通して使う仕組みだ。

 一方で、送電網や上水道とはつながっている。完全に公共インフラと切り離されたオフグリッド(独立電源)ではなく、購入する電気を減らしたり、災害時に一定期間は暮らしを維持したりすることを目的に柔軟な運用を目指す「接続型オフグリッド」が特徴だ。この家の持ち主、林俊伍さん(38)は「昔ながらの生活に戻るのではなく、テクノロジーを生かして地域の資源を循環させることを目指している」と話す。

「ずっと完成しない」

都市で暮らしていた様々なバックグラウンドの人たちが試みた「現代集落」の取り組みは、実は震災前から始まっていました。

 林さんたちが「現代集落」と…

この記事は有料記事です。残り835文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

この記事を書いた人
上田真由美
金沢総局|能登駐在
専門・関心分野
民主主義、人口減少、日記など市井の記録を残す営み
能登半島地震

能登半島地震

2024年1月1日午後4時10分ごろ、石川県能登地方を震源とする強い地震があり、石川県志賀町で震度7を観測しました。地震をめぐる最新ニュースや、地震への備えなどの情報をお届けします。[もっと見る]