運行トラブルが相次いできた熊本市電で25日、市電の車両同士が追突事故を起こし、7人のけが人が出た。熊本市中央区の「熊本城・市役所前」電停で午前8時半ごろ、前方に停車していた車両に後から来た車両が衝突。レール上にはオイルが付着して滑ったあとがあり、国の運輸安全委員会が現場を保全して事故原因の調査に入った。

 市交通局によると、乗客26人を乗せて電停に停車していた車両に、後ろから31人を乗せて来た車両が追突した。搬送された乗客6人は20代~50代の男女で、後続の車両に乗っていた。2人が肋骨(ろっこつ)を折り、2人が足を縫う手術を受けた。ケガをした運転士は40代で、先行車に乗っていた。レール上のオイルは左右両方にあり、市交通局では市電の車両から漏れた可能性が高いと見ている。

 疑われているのは、車両の老朽化だ。熊本市電は45編成を保有しているが、半数が製造から60年以上経過している。追突事故を起こした2両も1950年代の製造で、市が耐用年数の目安とする30年を大幅に超えている。

 市交通局は、車輪の軸受けやブレーキ系統にオイルを使っている14編成の緊急点検に入った。残りの車両で折り返し運転をすることで、一部区間の運行を再開した。

 熊本市電では昨年も年間16件の事故やトラブルが起きた。年末にはレール幅の広がりから脱線事故が起き、レールも古さが指摘されている。全線12キロのうち4割が設置から30年を超えており、交換を急いでいる。荒木敏雄・運行管理課長は「安全対策を進めるなかで重大事故を引き起こし、大変に申し訳なく、重く受け止めている」と陳謝した。(伊藤隆太郎)