面積の9割以上を林野が占める宮崎県諸塚村で、春を告げるイベント「諸塚山山開き」(村、村観光協会主催、朝日新聞社など共催)が今年、40回を迎えた。山の魅力に加え、村あげての温かなもてなしで毎年、県内外から多くの人が集う場となっている。

コロナ禍乗り切るため始めたお弁当、イベントでも好評

 9日、開山式があった飯干緑地広場で、柚子胡椒(ゆずこしょう)や漬物、煮しめなどが並ぶ「七ツ山婦人加工グループ」のブースには次々と人が訪れた。中でも、予約分を含め約110個用意したお弁当はすぐに完売した。

 発足して43年になるというグループは、農山村の加工品づくりの草分けとして知られる。現在は地区の30~70代の7人が携わる。

 5年前からのコロナ禍で、山開きを含む各イベントでの販売が途絶えた。それに代わる収入の手立てとして始めたのが、お弁当だった。

 予約をとって毎週水曜日に販売。役場や村内の事業所などから注文が入り、現在は毎回70食ほどつくっているという。代表の日吉和美さん(68)は「おかずが新たな加工品開発につながったり、家庭菜園の野菜を使うので畑が充実したりもしたんです」。

 お弁当には毎回メッセージをつける。山開きのお弁当には来場へのお礼とともにこんな呼びかけを添えた。「毎回、新たな姿を見せてくれる山並みに未来へのエネルギーをいただきましょう」

山村移住に関心、学生も

 インターンシップで村に滞在中の宮崎大地域資源創成学部の2年生3人も9日のイベントに参加した。役場で活動している前田真奈美さんは、村への移住をテーマに来場者からアンケートをとった。

 前田さん自身が山村で暮らすことに興味があって、インターン先に諸塚村を選んだという。

 村に新たに住むために必要なもの、必要なことは何か。村外から来た人、住民それぞれの回答を区分けしていた。「難しいけど、結果をさらに分析して報告会を開きたい」と話した。

 藤崎猪一郎村長は山開きについて「40回続けてこられたことはありがたい。村の大きなイベントで、外ともつながる行事として、今後も継続していきたい」と語った。(後藤たづ子)