袴田さん姉、58年の闘い 「元に戻してとは言わん」この先の覚悟
袴田秀子さん(91)は、弟・巌さん(88)に代わって法廷に立ち、待ち望み続けたその言葉を聞いた。無罪――。強盗殺人罪などで死刑が確定し、釈放された三つ年下の弟との二人三脚の闘いは、58年に及ぶ。
26日午後、静岡地裁。証言台に座った秀子さんは、裁判長の言葉を小さくうなずきながら聞いていた。言い渡しが終わり、席に戻る秀子さんは目を赤くしながら、弁護人と目を合わせ、笑みを浮かべた。閉廷後、支援者らが待ち構える正門前に姿を見せると「長い間、ありがとうございました」と感謝を伝えた。
「弟・巌に代わり、無実を主張します。巌に真の自由をお与え下さい」
「余命幾ばくもない人生かと思いますが、弟・巌を人間らしく過ごさせてくださいますよう、お願い申し上げます」
秀子さんは、再審公判の法廷に、長期の収容生活で精神を病んだ巌さんに代わって繰り返し出席し、思いを伝えてきた。
浜名湖近くの集落で生まれ育った。6人きょうだいの一番下が巌さん、その上が秀子さん。巌さんは年の近い、秀子さんを慕った。戦中は一緒に疎開を経験した。
特集 袴田巌さん58年後の無罪 なぜ死刑囚にされたのか
強盗殺人などの罪で死刑が確定していた袴田巌さん(88)に、再審公判で「無罪」が言い渡された。袴田さんに「死の恐怖」を強いたこの半世紀は何だったのか。前代未聞の事件を数字からたどる。
「家族は見捨てないよ」
きょうだいのなかでも目端が…
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