「大学改革」が奪った研究の自由 競争が目的化したその先にあるもの

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聞き手・田中聡子

 国立大学の学費値上げの議論が広がっています。値上げに追い込んでいるものは何か、そのことで失うものとは――。教育学者の古川雄嗣さんに聞きました。

     ◇

奪われた環境とは

 ここ数十年の「大学改革」は、文教政策として「一番やってはいけないこと」をやってきました。大学と研究者を競争に駆り立て、「役に立つ研究」への「選択と集中」を進め、自由で多様な研究と教育ができる環境を奪うことです。

 この方向を決定づけたのは、2004年の国立大の独立行政法人化です。独立行政法人とは、いわば国の「代理人」です。国が大学を直接運営するのは非効率だ、運営は代理人にやらせて、国は代理人同士を競争させるべきだという考え方です。

財布のひもをしばった政府

 競争に駆り立てるために、政…

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    本田由紀
    (東京大学大学院教育学研究科教授)
    2024年9月3日11時0分 投稿
    【視点】

    今日の朝日新聞デジタルに、街路樹の減少を批判する記事がある。専門知識に基づいて適切に剪定・維持すれば、住民にとって酷暑対策や街の美観の面で大きなメリットがある街路樹が、目先のコスト削減等を理由に乱暴に切り倒されたり枝を切り詰められたりしてい

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    平尾剛
    (スポーツ教育学者・元ラグビー日本代表)
    2024年9月3日11時0分 投稿
    【視点】

    教育や研究に「効率性」を、しかも「経済的」なそれを持ち込むことの弊害を、正しく指摘した記事です。それから「競争」についてもそうです。 競争原理を導入すれば、勝ち残った人たちは多大な恩恵を受けられるものの、落ちこぼれも生まれます。個々の優劣

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