私は「戦争反対」と叫ぶ 子どもだったあの頃の大人たちは 柚木麻子

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寄稿・柚木麻子さん 小説家

 去年、ベルリンを旅行した時、初めて訪れる街なのに、なんだか懐かしいような気持ちになった。

 到着してすぐホテルのテレビをつけたら、ナチスに関するドキュメンタリーが流れていた。現地に暮らす方に聞いたところ、この日が特別なわけではなく、日頃からごく当たり前に、戦争に関する番組がゴールデンタイムにバンバン流れているらしい。街を歩けば、ユダヤ人の慰霊碑や、ここで彼らが生きていたという証しである「つまずきの石」。観光地には必ずと言っていいほど、戦争や歴史に関する博物館があった。ただ本のPRと遊びを兼ねて出かけただけなのに、この国の来た道をたどることができた。

 もちろん、ドイツが手放しで完璧と言えるわけではない。自国の責任に向き合う姿勢は素晴らしいものの、故に現在ガザに侵攻するイスラエルを批判できないという負の側面も持っている。

 ただ、自ら情報を取りにいかずとも戦争に関する情報が次々に入ってくるこの感じは、私が子どもだった1980年代を思い出す。

小学生の頃の記憶

 あの頃は、教育現場にリアル…

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    小熊英二
    (歴史社会学者)
    2024年8月22日10時26分 投稿
    【視点】

    戦後日本の「愚直な戦争反対」には、保守派からも急進左派からも批判が多かった。しかしそれが民意として日本の方向性を決めていたのは間違いない。 たとえばベトナム戦争のとき、米軍の北ベトナム爆撃に対する反対は、各種世論調査では80%前後だった。

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    座安あきの
    (ジャーナリスト・コンサルタント)
    2024年9月22日14時52分 投稿
    【視点】

    「戦争反対」と正面きっていう。そうだ、何が悪い。子供や家族、友達が殺され、殺し合いをさせられた。家が破壊され街が焼き尽くされ、土地が奪われた。その土地の上に造られた軍事基地からベトナムに向け爆撃機が次々と飛び立った。上空から爆弾、枯葉剤を撒

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