「急に人気漫画家」遅れた確定申告 7800万円納めた後の強制調査

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小川裕介

 7月24日午前、福岡地裁。

 漫画家「ねこクラゲ」として、人気作品「薬屋のひとりごと」の作画を担当する池田恵理香被告(37)は、マスク姿のまま証言台に立ち、武田夕子裁判官による有罪判決を聞いた。

 「事務作業が極めて不得手で、金銭への関心が薄く、年齢相応の社会制度に対する理解も不足した被告人が、急激に人気漫画家となり、確定申告の重要性を軽く見て、目の前の仕事やプライベートを優先させ、(申告の)事務作業から逃げ続けた結果、犯行に至った」

 「犯行」とは、2019~21年分の原稿料や印税などの所得が約2億6千万円あったのに確定申告せず、約4700万円を脱税した所得税法違反罪。判決は、懲役10カ月執行猶予3年、罰金1100万円(求刑懲役10カ月、罰金1400万円)だった。

漫画家「ねこクラゲ」に有罪判決

専門学校を出た後、急に人気漫画家になった女性は、なぜ脱税事件で在宅起訴され、有罪判決を受けるに至ったのか。法廷では、国税局の査察を受けた経緯などを詳しく語りました。

 言い渡し後、武田裁判官から「もううっかりでは済まされない。日々色んなこと、体に気をつけて生活するようにしてください」と諭されると、池田被告は深く頭を下げた。

 被告はこの日、報道陣になにも語らぬまま法廷を後にしたが、これまでの法廷では「(税を)免れようという気持ちはなかった。確定申告は数年分まとめてできると思っていた」などと述べていた。

 検察側によると、被告は専門学校在学中から漫画家のアシスタントを務め、10年ごろから連載を始め、印税や原稿料を受けとっていた。

 出世作となったのは、17年…

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この記事を書いた人
小川裕介
西部報道センター|事件キャップ
専門・関心分野
核・原子力、感染症、事件、調査報道
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    インベカヲリ★
    (写真家・ノンフィクションライター)
    2024年7月30日17時19分 投稿
    【視点】

    『急な「売れ」に備える作家のためのサバイバル読本』(朱野帰子)を読むと、急な売れは災害に遭うようなもの、税理士を見つけておこうという話が出てくるけれど、この記事のように税金を納めても見せしめで有罪にされるのかと思うと震え上がる。ズボラは摘発

    …続きを読む
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    白川優子
    (国境なき医師団看護師)
    2024年7月31日21時7分 投稿
    【視点】

    この先生は、悪気は本当になくて、ただ単に無頓着なだけだったのではないかという印象を受けました。もちろん度が過ぎているかも知れませんが、「犯行」という言葉はズレているような気がします。 私も最近フリーになり、確定申告やら経費のことなどを一生

    …続きを読む