「虎に翼、壁は今も」 男社会の日弁連、女性4割が変えた空気
男女の不均衡を是正するため、定数の一定割合を女性とする「クオータ制」が世界的に広がるなか、日本で導入しているのが日本弁護士連合会だ。日本初の女性弁護士が主人公をつとめるNHKの朝ドラ「虎に翼」と同様に、現実世界でもさまざまな壁が女性弁護士たちの前には立ちはだかってきたというが――。国内では珍しい制度はいかに導入されたのか。クオータ制がもたらした変化とは。
戸惑われた就職面接「女性は…」「あつれきが」
「女性は採用したことがない」
2014年に大阪弁護士会で初の女性会長となる石田法子弁護士(75)が、法律事務所での就職面接でこう戸惑われたのは1976年のことだ。「事務所内でほかのメンバーとあつれきが生まれないだろうか」とも言われたという。採用にはこぎ着けたものの、顧客からは「(担当を)男性に代えてくれ」と言われることもあった。
この年、1万421人いた日本の弁護士のうち、女性はわずか3・2%、330人。大阪弁護士会の建物内にずらりと並ぶ歴代会長の顔写真は、すべて男性だった。男性ばかりの状況はわかっていたものの、写真を眺めながら改めて「変な世界に来てしまった」と思ったという。
「女性の立場で発言してください」の苦痛
弁護士は、弁護士会への加入と日弁連への登録が法律で義務づけられる。日弁連には、政府の動きをチェックして意見を示す「人権NGO」の役割がある。ところが、その足元では圧倒的な「男社会」が温存されていたのだ。
女性弁護士への就職差別のほか、出産や育児への理解は当然乏しく、男性弁護士によるセクハラもあった。少なくとも00年代までは、弁護士会内の懇親会にコンパニオンが呼ばれることもあった。
保育園への子どもの迎え「なんで?」
石田さんは01年に日弁連理事を務めたが、71人中、ただ一人の女性だった。「女性の立場で発言してください」とよく言われるのが苦痛だった。「女性の中にも様々な意見がある。私は私の意見を言っているのに」と感じていた。
記事の後半では「クオータ制」に反対の声も上がる中、どのようにして導入できたのか、男性優位の価値観に気づいた男性弁護士の話などを紹介します。
〈意思決定の場に女性が参加…
Think Gender
男女格差が主要先進国で最下位の日本。この社会で生きにくさを感じているのは、女性だけではありません。性別に関係なく平等に機会があり、だれもが「ありのままの自分」で生きられる社会をめざして。ジェンダー〈社会的・文化的に作られた性差〉について、一緒に考えませんか。[もっと見る]