人気バンドMrs.GREEN APPLEの新曲「コロンブス」のミュージックビデオ(MV)が差別的だと批判を受け、公開が停止されるということがありました。
広告会社での勤務経験もあるドイツ在住の音楽ライター浅沼優子さんは、問題のあるMVが公開されてしまった背景には、日本の音楽業界の構造、そして批判そのものを良くないとする社会の空気が関係していると指摘します。
――MVの問題が起きた直後に、アーティスト自身が謝罪文を公表しました。
「『コロンブス』は曲調やメロディーがキャッチーな良くできたポップソングで、本来ならヒットしていただろうと思います。歌だけなら問題にはならなかったはずです。問題は、なぜあのMVが出来上がり、公開されたかです」
「謝罪文で、『リスクへの配慮』をあやふやにしてしまった、という言葉が使われていました。ここで言う『リスク』とは、SNSで炎上したことで周囲に迷惑をかけ、MVを取り下げる事態になるようなダメージをもたらす『リスク』という意味でしょう。それを想定できなかった自分の至らなさを謝罪していると読みました」
「ここに、私は資本主義の限界を感じました。利益を追求するからこそ、世間的に良くないと思われているものは採用されず、より優れたものが選択されるはずだという考えがあると思います。利益か不利益かが尺度になっています」
――謝罪文には、悲惨な歴史を肯定するものにしたいという意図はなかった、とも書かれています。
「文中で植民地主義や人種差別などについて言及されていましたが、MVの何がそもそも問題だったのかに向き合っているようには見えません。こうした表現によって傷つく人たちがいるという『リスク』は考えられていないようです」
「『差別的な内容にする意図はなかった』とありますが、差別的な表現をしようと思ってする人は、一部のヘイト活動家などを除けば、ほとんどいません。無意識に差別意識が出てしまうことが問題なのに、そのことが理解されていません」
「差別する意識がないまま、類人猿を登場させたところを考えてもらいたい。属性の異なる相手を『非人間化』することで、自らの攻撃を正当化する思考が、人種差別です。なぜ、それが『楽しい』描写だと思ったのでしょう」
――アーティストだけの問題でしょうか。
「このMVには制作会社や広告会社など『常識を持った大人』がたくさん関わっていました。その人たちの問題でもあります」
「私は音楽ライターとして、またアーティストの出演ブッキング(契約)をする者として、国内外の多くのアーティストを見てきましたが、売れるほど自分の意見を言わなくなります」
「売れれば、CM出演やアニメ・ドラマとのタイアップなど企業案件が増えます。お金も絡むので、ビジネス上なるべく波風を立てず、なるべく多くの人に好まれるものを作るようになる。日本のエンタメ産業では特に強く見られる傾向です。メジャーシーンに出れば出るほど、この産業の中に取り込まれ、純粋な自分の表現活動というより、売れるものを作るようになります」
――海外ではCMに有名人はあまり出演しませんね。一方、日本では有名人が出演することがとても多いですが、こうした影響もありますか。
「以前、広告会社で勤務していましたが、そこで言われていたのは『日本では、これが受ける』でした。わかっていて有名人を出しているんです」
「数年前に大手広告会社の社員…