「選ばれる国」になれるのか 外国人労働者の「育成就労」制度創設

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久保田一道 黒田早織

 外国人労働者の受け入れをめぐり、30年余り続く「技能実習」制度を廃止し、新たな「育成就労」制度を創設する改正入管難民法などが14日、参院本会議で賛成多数で可決、成立した。施行は公布から3年以内。人権侵害の温床との批判が根強い旧制度から、日本で働き続けられる仕組みへの転換を図る。

 自民、公明、日本維新の会、国民民主などが賛成し、立憲民主や共産、れいわなどは反対した。

人口減社会に突入した日本で、外国人が長く働き続けられる仕組みづくりを目指す新制度。記事の後半では、課題解決につながるのかをさぐり、2人の識者の見方も紹介しています。

 1993年に導入された技能実習は、途上国への技術移転を通じた「国際協力」を目的としたが、人手不足を背景に安価な労働力確保に利用されてきた実態がある。帰国を前提とする最長5年の在留期間のなかで、原則3年は職場の変更(転籍)ができず、来日時に多額の借金を負った実習生が、劣悪な職場から失踪する例も相次いだ。

 育成就労は「人材の育成と確保」を目的に掲げ、在留期間は原則3年。技術水準がより高く、最長5年間在留できる「特定技能1号」と就労対象分野をそろえ、移行を促す。上級技術者向けの「技能検定1級」相当の試験への合格などが要件の「特定技能2号」に移れば、在留期間の更新に上限がなくなり、永住者への変更も視野に入る。

 労働者としての基本的権利の保障をめざし、転籍は、同じ分野内に限り、働き始めて1~2年後に認める。来日時の多額の借金の原因となっていた母国の送り出し機関への手数料については、額に上限を設けたり、日本の受け入れ企業に相応の負担を求めたりする仕組みを施行までに検討する。

 送り出し国側と企業の間で受け入れを調整する民間の「監理団体」は、「監理支援機関」に名称を変更。企業側と一体化し、監督の役割が不十分との指摘があるため、外部監査人の設置を義務付け、企業からの独立性や中立性を確保する。外国人労働者が家族とともに暮らすハードルの高さは今後も変わらず、育成就労の3年間と特定技能1号の5年間の計8年間は家族帯同は認められない。

永住許可の取り消し規定に懸念

 旧制度の基本的な枠組みが維持されたことで、新制度は看板の掛け替えに過ぎないとの批判もある。

 永住者の増加を見据え、税金…

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この記事を書いた人
久保田一道
東京社会部|法務省担当
専門・関心分野
法制度、司法、外国人労働者、人口減少
黒田早織
ネットワーク報道本部|東京駐在
専門・関心分野
司法、在日外国人、ジェンダー
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    遠藤乾
    (東京大学大学院法学政治学研究科教授)
    2024年6月16日14時45分 投稿
    【視点】

     議論の構えが狭い印象。これは事実上の移民開放宣言。政治への影響が大きい。入ってくる外国人の話だけをしているのではだめで、それと土着の日本人との関係を正面から考えなければならない。  より具体的には、外国人労働者、日本人低所得者(アンダーク

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