第19回母に「汚い」と吐き捨てられ 暴力、虐待、全て戦争とつながった

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後藤遼太
【動画】元日本兵だった父の性暴力に苦しんできたと話す藤岡美千代さん=後藤遼太撮影
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 「きたなぎもん」

 母は、藤岡美千代さん(65)を、こう呼んだ。「汚いやつ」という意味だ。名前で呼んでくれたことはなかった。ひどい時は「畜生」と吐き捨てられた。

 復員兵だった父は酒におぼれ、戦場の幻覚を見て家族に暴力をふるい、幼い藤岡さんの体をまさぐった。

 母は、父の性加害を、おそらく知っていた。

 父が布団に招き入れていたのは、家族4人が雑魚寝する狭い4畳半。隣で父が何をしているか、母が気づかぬはずはない。

 父の生前、よく夫婦げんかをしていた。後から思い返すと、性交渉を迫る父と、それを拒む母の言い争いだった。だから、父の矛先が自分に向いたのだろうか。

 幼い頃から母は藤岡さんに厳しかった。決して手をつなごうとせず、抱っこをしてくれた記憶も一度もない。

父が死んでも、続いた地獄

 9歳の冬、父が死んだ。虐待から解放されたはずだった。

 今度は母からの暴力が始まっ…

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この記事を書いた人
後藤遼太
東京社会部|メディア・平和担当
専門・関心分野
日本近現代史、平和、戦争、憲法

連載戦争トラウマ 連鎖する心の傷(全33回)

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