拡大する写真・図版「コレクト・ナショナル」が開かれていた大手スーパー「モノプリ」の店内。ボランティアが食品や日用品を袋に詰めている。客は袋の中身をレジで購入し、食品を寄付する=2023年11月25日、パリのモンパルナス地区、寺田実穂子撮影

 日本と同じく、寄付文化がアメリカほど盛んでないフランスには、3日間で「エッフェル塔の重さ」ほどの大量の食品や日用品が国民から集まるイベントがある。イベントは、フランスの大手フードバンク団体が主催し、集まった食品や日用品は生活困窮者など必要とする人々に届けられている。どのようなイベントなのか、日本での寄付の活性化につながるヒントを探りに、昨秋、フランスを訪れた。

日本で急増しているフードバンクのこれからを探りに、欧州でフードバンクが盛んなフランスをたずねました。2回目はどのような人に届いているのか、3回目は政府はどう考えるのかを取り上げます。4回目は番外編。五輪と食品ロスの取り組みについて識者に聞きました。

 11月下旬。イベントの舞台は、全国のスーパーマーケットだ。午前10時、パリ南部のモンパルナス地区にある大手スーパー「モノプリ」の入り口には、蛍光オレンジのベストを着た若い女性が笑顔で立っていた。「こんにちは」と言って渡してくれたチラシには、缶詰やチョコなどの食品や日用品の写真が載っている。店内を進むと、ほかにもあのベストを着た人がいる。スーパーの従業員ではなく、イベントのボランティアだ。

 客には、自分用の買い物のついでに、入り口で配られたチラシを元に寄付用の商品を買ってもらう。レジを通った先に、「シリアル」「砂糖」など品目が書かれた箱が並んでいて、そこに仕分けして入れたり、近くにいるボランティアに渡したりしていた。

拡大する写真・図版「コレクト・ナショナル」が開かれたスーパーのレジ付近で、寄付食品を集める箱。品目別に仕分けされる=2023年11月25日、パリのモンパルナス地区、寺田実穂子撮影

 「どうぞ~」と言って女性客がボランティアに渡したのは、茶色い紙袋。店舗内には、この茶色い袋が並んでいる一角がある。「4ユーロ以内」や「6ユーロ以内」と書かれた袋に事前にボランティアが商品を詰めておいて、客が袋を選んで買うこともできる。

 この袋を買って寄付をしたパリ在住のケディジャ・ティムさん(55)は、普段から様々な寄付には参加しているが、今日は電車に乗り遅れて、水を買うためにたまたまモノプリに。「イベントがやっているなら寄付は断れない。機会が与えられたらそれに応じてやります」と話していた。

 レジの近くの箱は、2時間前には空のものもあったが、次第にどんどんと商品で埋まっていった。

拡大する写真・図版「コレクト・ナショナル」が開かれていたスーパーで、商品を買って寄付をする客=2023年11月25日、パリのモンパルナス地区、寺田実穂子撮影

 イベントの名前は「コレクト・ナショナル(国民収集)」。企業などからの寄付食品を集めて、生活困窮者などを支援する団体に配っている大手フードバンク団体「バンク・アリマンテール」が主催している。毎年11月の最後の週末に、フランス全土のスーパーマーケットで一斉に行われる。3日間でのべ11万人のボランティアが参加する。

 イベントは、1984年に始まった。主に企業からの寄付で成り立っているが、国民収集は、一般市民が寄付に参加できる唯一の機会であり、フードバンク活動を周知する重要な機会となっている。いまではバンク・アリマンテールが全国で集める年間の食品量のうち約10%を占める重要な寄付源となっている。

 今年で39回目となる。バンク…

この記事は有料記事です。残り1078文字
ベーシックコース会員は会員記事が月50本まで読めます
続きを読む
現在までの記事閲覧数はお客様サポートで確認できます
この記事は有料記事です。残り1078文字有料会員になると続きをお読みいただけます。
この記事は有料記事です。残り1078文字有料会員になると続きをお読みいただけます。