木村敏(びん)(63)は仙台市太白区にある寺の住職。9年前まで、隣の宮城県名取市の職員だった。人の死に日ごろから触れる木村でさえ、震災から3年ほどは、死者の顔が頭に浮かび、うなされる夜があった。

 2011年当時は、ごみ処理や火葬場を担当するクリーン対策課の課長。

 発災した3月11日の夜、「遺体安置所はうちの課が担当します」と市長に申し出た。市役所は内陸にあるが、沿岸部の甚大な津波被害が伝わってきていた。

 市の地域防災計画に記された遺体対応の所管は、ふだん孤独死などを扱う社会福祉課。だが同課は、避難者などの対応で精いっぱいだった。「市制施行以来、災害で死者が出たことがない。防災計画の分掌もいい加減だった」と木村は振り返る。

 夜のうちに検視場所の体育館を準備。翌朝一番に係長を仙台市の葬祭用品卸業者に向かわせ、倉庫にある棺をすべて買い取った。市内の葬祭業者にも協力を依頼した。

 マニュアルも起案書も予算の裏付けもない。役所のルールはとりあえず横に置いた。

安置所は3日で満杯 「まるで遺体マネジメント」

 遺体は自衛隊の手で続々運ばれ…

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