イスラム組織ハマスによるイスラエルへの奇襲に国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の複数の職員が関与した疑惑を受け、日本政府は28日、UNRWAへの資金拠出を一時停止すると決めた。29日時点で停止を決めた国は10カ国以上にのぼるが、パレスチナ自治区ガザ地区で戦火を生きる住民への「集団懲罰」になるとの懸念の声もある。

日本外務省「適切な対応求める」

 林芳正官房長官は29日の記者会見で、「極めて憂慮をしている。UNRWA側において本件に関する調査が行われ、対応策が検討される当面の間、追加的な資金拠出を一時停止せざるを得ないとの判断に至った」と述べた。多くの職員は献身的に人道支援を行っているとし、「UNRWAが本来果たすべき役割をしっかりと果たせるように、調査が迅速かつ完全な形で実施され、適切な対応がとられることを強く求める」とも強調した。

 日本は昨年11月に成立した2023年度補正予算にUNRWAへの約3500万ドル(約52億円)の追加支援を盛り込んでいる。

 AFP通信などによると、29日までに米国、オーストラリア、カナダ、英国、ドイツ、イタリア、オランダ、スイス、フィンランド、フランス、日本、オーストリアが資金拠出の停止を決めた。

 イスラエル軍の侵攻が続くガザ地区では、190万人が避難を強いられ、200万人がUNRWAの支援に頼っている。国連のグテーレス事務総長は28日の声明で、UNRWAの現在の資金状況では、2月にはガザでの支援を縮小せざるをえないという見通しを示した。

 資金拠出の継続を表明したノルウェーのアイデ外相は28日の声明で、UNRWA職員の奇襲攻撃への関与に懸念を示しつつも、「この深刻な人道状況でUNRWAへの資金を削減することの影響の大きさを考えるべきだ。我々は何百万人もの人々を集団的に罰するべきではない」と訴えた。

疑惑の職員、教師や事務員として活動か

 UNRWAは1949年に設立…

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