津波を一緒に生き抜いた愛犬ケンシロウ 唇かみしめ「一時の別れだ」

有料記事能登半島地震

古畑航希

 元日も高枝岳人さん(56)は柴犬(しばいぬ)のケンシロウと散歩に出た。緑内障の影響で左目は見えない。右目も足元が見える程度だが、散歩は「2人」の大切な日課だ。

 石川県珠洲市宝立町の鵜飼(うかい)地区一帯を回り、海岸から約130メートルの自宅に帰ってきた。裏口そばにケンシロウをつなごうとしたその時だった。

 ざーっ。

 「何の音だ?」と考える間もなく、津波に下半身から倒された。土砂まじりの黒い水に体がのまれるのを感じた。限られた右目の視野のなか、傍らにいたケンシロウも流されようとしていた。

 尻尾を必死につかんだ。引き寄せてしっかりと右脇に抱え、自宅の内壁にしがみついた。波が引くまでは5分ほど。水は、身長185cmある自身の腰にまで達していた。

 母(78)と祖母(92)も1階で水につかった。避難所に向かおうとしたが、がれきで道路は通れず、日も暮れてきたので諦めた。

ケンシロウとのしばしの別れの前に。1人と1匹のさんぽの様子の動画を記事後半でご覧頂けます。

 2階で一夜を過ごすことにしたが、灯油ストーブも動かない。4歳のケンシロウもぶるぶると震え、見たことがない様子だった。目の前の一軒家で火事が起き、徐々に火が広がっていた。夜中を過ぎても燃え続け、寒さと恐怖で一睡もできなかった。

 翌日、自宅付近にいたボラン…

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    清川卓史
    (朝日新聞編集委員=社会保障、貧困など)
    2024年1月18日12時0分 投稿
    【視点】

     家族同然の愛犬への被災者の切実な気持ちが伝わってくる記事です。  猫3匹がいるため避難所に入らず、地震発生後ずっと車中泊を続けている飼い主の夫婦がいる。輪島市や珠洲市などで飼い主とペットの支援を続けている日本レスキュー協会のスタッフの方に

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    太田匡彦
    (朝日新聞記者=ペット、動物)
    2024年1月18日12時22分 投稿
    【視点】

    「ペットと同行避難をすることは、動物愛護の観点のみならず、飼い主である被災者の心のケアの観点からも重要である」  環境省がまとめた「人とペットの災害対策ガイドライン」に出てくる一節です。  ペットとの同行避難、同伴避難には、日頃のしつけ

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