科博クラファンで見えた 「館の命、国が見殺し」専門家が訴える危機
国立科学博物館のクラウドファンディング(CF)は、国立の博物館でさえ運営の基盤が揺らいでいることを印象づけました。博物館の運営に詳しい栗田秀法・跡見学園女子大教授は、国の姿勢について「博物館の『命』を見殺しにするようなもの」と指摘します。
博物館の大事な役割に、標本や資料の収集と保管があります。標本や資料は、地球や人類の記憶であり痕跡です。すでに貴重だとわかっているものもあるし、いまの価値判断では無用と振り分けられてしまうものもあります。そうした資料でも、学術の発達した未来に価値が判明する可能性がある。だから、できるだけ多くの資料をタイムカプセルのように保存し、未来につないでいくのは、博物館の使命なのです。
標本や資料を長期間良い状態で保管するためには、温度や湿度が整った環境を保たなければなりません。空調は不可欠です。
科博のCFでは、国立の博物館でさえ光熱費の捻出が厳しい状態に陥っていることが公になりました。基本的には他館も同じ状況です。幸い今回は国民が見捨てず多くの支援が集まりましたが、博物館の基本的な環境を整えるためにお金を募らせたのは、国が最低限の役割を果たしていないからと言わざるを得ません。
資料は博物館の「命」です。政府が推進する文化観光の最大のリソースでもある。国はそれを見殺しにしようとしたとも言えます。観光立国をうたう政府、あるいは文明国の「恥」とも言える状況だと思います。
「自前で稼ぐ」が難しい理由
自前でもっと稼げるのでは、という疑問もあるかもしれません。一般的に国立の博物館の収入の内訳は、国からの運営費交付金が一番多く、次いで常設展や企画展の入場料、一部に寄付があります。
ただ自前で大型の企画展をす…