滋賀県内にちなんだ、子ども向けの作品を集めた児童書「ぼくら滋賀っ子 あかねいろの宝箱」を、県児童図書研究会(田中純子会長)が出版した。「街の宝」を子どもたちに知ってもらおうと、県内の全小学校や図書館、公民館、読書ボランティアサークルなど約1千カ所に寄贈する。

 同研究会は、地域の宝物といえる子どもたちのために、街の宝物を掘り起こして本にする活動をしている。

 公益財団法人「平和堂財団」(彦根市)の資金援助を受け、2013年から2年ごとに出版。今回の児童書は「たからばこシリーズ」の6冊目になる。これまでも全小学校などに贈ってきた。

 「あかねいろの宝箱」には、同研究会の会員が県内各地のさまざまなテーマを調べ、書き下ろした13編が掲載されている。

 祖母と守山のホタルの出会いを追った「ほたるの家」▽今は閉山となっている長浜の鉱山跡を訪れる「どうよ! 土倉鉱山」▽鏡の宿に伝わる義経伝説(竜王町)▽びん細工手まり(愛荘町)▽栗東トレーニングセンター(栗東市)など。

 巻頭を飾るのは「『天保義民を知らない』なんて言わせない」。江戸時代後期の天保の飢饉(ききん)の際、幕府が近江で実施した検地に対し、野洲や甲賀、栗太3郡の数万人の農民が不当だと訴えて一揆を起こし、検地を阻止した。だが、首謀者とみなされた土川平兵衛らは獄死するなどした。

 物語には土川の出身地・野洲市三上の小学生が登場。一揆の意味や土川の行動などを調べ、「自分のできる範囲で人のために尽くそう」というメッセージを発している。

 寄贈の手始めに、6年生が総合学習で土川について調べている野洲市立三上小学校で16日、贈呈式があった。平和堂財団の衣斐隆常務理事から児童代表として本を受け取った八木登麻さん(6年)は「三上に土川平兵衛さんがいて、誇らしく思います」。その後、作者の楠秋生さん(52)が6年生約30人を前に物語を朗読した。

 同研究会顧問の今関信子さん(81)は「この学校がある地域のお話です。図書館で探して読んでください」と子どもたちに呼びかけた。(松浦和夫)

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