2060年までに核融合エネルギーを多面的に活用する――。核融合開発の国際競争が激しくなるなか、そんな新たな目標を政府が掲げようとしている。挑戦的な研究に資金を投じ、技術革新を加速させるのが狙いだ。核融合は社会を一変させうるが、目標を実現できるのだろうか。

 太陽の内部では、水素の原子核4個がくっついてヘリウムになる核融合反応で、膨大なエネルギーが発生している。これと同じような反応を人為的に起こそうと、60年以上前から「地上に太陽をつくる技術」として核融合が研究されてきた。

 トカマク、ヘリカル、レーザーなど複数の方式があり、重水素と三重水素を燃料とするのが主流だ。燃料を数億度まで加熱すると、原子核と電子が自由に動き回るプラズマ状態になって核融合反応が起きる。わずか1グラムの燃料で、石油8トンを燃やしたのと同等のエネルギーが得られる。

 核融合は社会を一変させる可能性がある。

 燃料の重水素は海水に含まれ、資源枯渇の心配なく持続的にエネルギーを得られる。原発の発電過程と同じく二酸化炭素を排出しないうえ、原発と違って高レベル放射性廃棄物は出さない。エネルギーや資源の確保、地球温暖化などの問題から解放されると期待されている。

国際競争の激化 スタートアップへの投資も増加

 現在、日米欧など30カ国以上が加わる国際熱核融合実験炉「ITER」が仏南部で建設中だ。

 そうした国際協調の一方、米英がそれぞれ独自の戦略をまとめるなど、核融合時代の主導権争いが始まりつつある。

 民間でも、欧米や中国のスタートアップ企業の参入が相次いでいる。

 米核融合産業協会の7月の報告…

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