「会った時からいいと思っていた」。俳優として活動する女性(35)は、2010年代に所属した芸能事務所の社長からそう言われ、肉体関係を迫られたことがある。自分をどう売り出すかを親身に考えてくれ、「いい人」だと思っていた。

 関係を断ると、態度が豹変(ひょうへん)し、目を殴られるなどの暴力を振るわれた。他の事務所に移っても社長らから関係を求められた。周りから「セックスが好きじゃないと業界でやっていけないよ」と言われ、先輩に相談したら「うまくかわさなきゃ」と返された。

 関係を迫る人たちの手口は同じだ。「好きなんだ」「売り出したいから」。マネジメントの見返りに、「恋愛」を求める。「これが芸能界の常識」だと思い、自分が未熟だと考えたことさえある。仕事を与える側と与えられる側――。圧倒的な力の差があった。今なら、こう思える。「何て、ずるいんだろう」

ジャニー喜多川氏の性加害問題を巡る連載の最終回は、芸能界における事務所と所属タレントの関係について考えます。

 俳優や音楽家らの活動を支援す…

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