トランスジェンダーの経済産業省職員をめぐり、勤務フロアから2階以上離れた女性トイレを使用するという制限の撤廃要求に応じなかった人事院の判定を、違法とした11日の最高裁判決の要旨は次の通り。

 【判決の理由】

 職員は性同一性障害との診断を受けており、自認する性と異なる男性用トイレを使用するか、執務階から離れた階の女性トイレなどを使用せざるを得ず、日常的に相応の不利益を受けているといえる。

 一方、健康上の理由から性別適合手術を受けていないものの、女性ホルモンの投与を受けるなどし、性衝動に基づく性暴力の可能性は低いとの診断も受けている。女性の服装で勤務し、2階以上離れた女性トイレを使用するようになったことでトラブルが生じたことはない。

 (経産省が2010年に職員の状況を説明し、女性トイレ使用への意見を求めた)説明会では、数人の女性職員が違和感を抱いているように見えたにとどまり、明確に異を唱える職員がいたとはうかがわれない。説明会から15年の人事院判定に至るまでの約4年10カ月間、職員の女性トイレ使用につき、特段の配慮をすべき他の職員がいるかの調査が改めて行われ、処遇見直しが検討されたこともない。

 以上によれば、職員に不利益を甘受させるだけの具体的な事情は見当たらなかったというべきだ。人事院の判断は、具体的な事情を踏まえず他の職員への配慮を過度に重視し、上告人の不利益を不当に軽視するもので、著しく妥当性を欠く。裁量権を逸脱し、または乱用したものとして違法だ。

今回の判決では、5人の裁判官全員が補足意見をつけました。それぞれ紹介します。

 【宇賀克也裁判官の補足意見】

 職員が戸籍上はなお男性である…

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