平和だからできる吹奏楽 響き続けるように(My吹部seasons)

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 2023年6月23日、慰霊の日。78年前のこの日、第2次世界大戦における沖縄戦で、日本軍の組織的戦闘が終結した。多くの住民を含めて20万人以上、沖縄県民の約4分の1が命を落とすという悲惨な戦いだった。最後の激戦地となった沖縄本島南部の平和祈念公園では、沖縄県の玉城デニー知事や岸田文雄首相のほか、一般の参列者も加わって戦没者追悼式が行われ、正午に黙禱(もくとう)を捧げた。

 同じころ、那覇市の中心部に位置する県立那覇高校の視聴覚室では、吹奏楽部員たちも練習を中断し、静かに目を閉じた。

 窓の向こうにある城岳公園には、沖縄戦で犠牲になった旧制県立第二中学校(那覇高校の前身)の生徒・職員194人の慰霊塔「二中健児の塔」があり、やはり慰霊祭が行われていた。

 視聴覚室で黙禱する吹奏楽部員たちの中には、3年の部長でトランペット担当の「マキ」こと長谷川真紀や、2年の次期部長でクラリネット担当の「ヤマミー」こと山城実由の姿もあった。

 毎年、沖縄の梅雨は慰霊の日のころに明ける。今年はまだ梅雨明け宣言は出ていなかったが、マキは数日前から肌に刺さるような日差しの強さを感じていた。

 「もう夏なんだな……」

 78年前の6月23日、焼け野原になった沖縄で、当時の高校生たちはどんな思いで肌に夏の太陽を感じていただろうか。

        ♪

 黙禱の後、昨年度から顧問を務めている中城(なかしろ)愛香が指揮台に立ち、部員たちに語りかけた。

 「人って体験していないことをイメージするのは難しいでしょ? でも、戦争は体験してからじゃ遅いわけさー。だから、体験した人から話を聞いたり、調べたりして、イメージすることがとっても大事です。イメージする力は音楽にも通じますよね。今日は何の日なのか、ということを1日イメージしながら活動してください」

 それから、中城が指揮をし…

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