高木文子、中村真理
車を保有していることを理由に、生活保護が受けられないのは違法だとして、自治体を訴える例が相次いでいる。生活必需品ともされる車が受給を希望する人の「壁」になっているのはなぜか。(高木文子、中村真理)
岐阜県関市の男性(64)は2月に生活保護の停止決定を受けた。軽乗用車の処分を求められたが応じなかったためだ。
代理人弁護士によると、男性は持病で30年前から長距離を歩くことが、15年前からは働くこともできない。2021年7月から支給される生活保護が唯一の収入だ。
亡くなった親から譲り受けた自宅で一人暮らし。最寄りのスーパーや病院は自宅から1キロ以上離れている。バス停までも約450メートルある。「車がなければ生きていけない」。3月に停止決定の取り消しを市に求める訴えを岐阜地裁に起こした。
同様の訴訟2件は津地裁でも続く。
訴状によると、三重県鈴鹿市の女性(80)は難病を抱える次男(55)と二人暮らし。生活保護の支給に際して次男の通院のためだけに車の保有が認められたが、市は通院以外は利用しないよう指導。これに従わなかったため、昨年9月に生活保護の停止を決めた。
親子は共に身体障害者手帳(女性は4級、次男は2級)を持つ。長距離を歩くのは困難で、買い物など日々の生活にも車が欠かせない。昨年10月に提訴に踏み切った。
翌11月には身体障害者1級の女性(71)も市を提訴した。歩行には杖が必要で、横断歩道を渡りきる前に信号が変わることもある。公共交通機関のアクセスは悪く、タクシーの確保も容易ではない。「車は私の足なんです。(保有を)認めてほしい」
各原告は判決が出るまで保護停止決定の効力を止めるよう申し立てた。各裁判所は保護停止により「生活を維持できなくなるのは明らかで、重大な損害が生じる」などと指摘。それぞれの申し立てを認める決定をした。
いずれの訴訟も、車の保有制限の是非が大きな争点になりそうだ。
車の保有はなぜ原則認められな…