AI時代の藤井聡太新名人 記者への告白「棋士の価値を信じる」

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北野新太
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 将棋界に20歳の名人が誕生した。藤井聡太新名人が14歳2カ月の史上最年少棋士になってから史上最年少名人にまで駆け上がる6年半は、進化したAIが盤上技術を変革した時代でもある。人工知能による技術革新で社会が変わり始める中で台頭し、頂点を極めた新名人はAIによって生まれた棋士なのだろうか。新名人本人に問い掛け、こぼれ落ちた言葉から考えた。

 新名人誕生の時は迫っていた。

 報道陣や関係者が集まる控室で思い出していたのは、3年前に藤井聡太が語った言葉のことだった。

 2020年7月16日、初タイトルの棋聖を得た夜の会見で藤井に尋ねた。

 「AIとの共存期において、人間、あるいは棋士が持つ可能性についてどのように考えているのでしょうか」

 当時17歳の青年は少考した後に言った。

 「今の時代においても将棋界の盤上の物語は不変のもの。その価値を自分自身も伝えられたらと思います」

 体温のある言葉は、様々なことがAIに代替され始めた時代における希望の声に聞こえた。

 あの「物語」の本当の意味とは何なのか。

 名人に至る七番勝負の過程の今年5月、3年後の答えを聞いた。

藤井聡太新名人が、そして佐藤天彦九段が語ったこと。AIの結論ではなく、盤上の、人間のドラマを大切にする棋士の思いとは。

 「対局に現れるのは指した手…

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    中川文如
    (朝日新聞スポーツ部次長)
    2023年6月2日9時54分 投稿
    【視点】

    なるほど、そういうことなのかもしれないなあと。藤井聡太名人が紡ぎ出す言葉から、一流のアスリートに通じるマインドセットを感じてしまいました。 北野新太記者がつづった渾身のストーリーの、結びの一言をリピートさせていただきます。「棋士の価値

    …続きを読む