神宮外苑の大規模開発、反対署名19.5万筆 何が問われているのか

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土舘聡一 野村周平
【動画】再開発が進む明治神宮外苑=依知川和大撮影
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 「天国から『何かしないの?』と、せかされているような気もします。一人の人間として社会に発信を続けた坂本龍一さんの生き方に、私たちも一人の人間として遺志を引き継ぎます」

 4月22日夕、東京・国立競技場近くに集まった人々に向けて、ステージから哲学研究者の永井玲衣さん(31)が語った。原発や環境保護などの社会問題をともに考え、3月28日に亡くなった音楽家の坂本龍一さんは、最期を前に、明治神宮外苑地区の再開発に目を向けた。

 「率直に言って、目の前の経済的利益のために先人が100年をかけて守り育ててきた貴重な神宮の樹々を犠牲にすべきではありません」「開発によって恩恵を得るのは一握りの富裕層にしか過ぎません」

 亡くなる1カ月前に小池百合子都知事らに宛てて書いた手紙は、大きな反響を呼んだ。共鳴する人らによるデモが都内で続き、4月22日の集会には約4時間で延べ約6千人が参加した(主催者発表)。

東京都心の一等地にある神宮外苑の再開発が注目を集めています。樹木の伐採や高層ビルの建築をめぐって見直しを求める声が上がるなか、本格的な工事が始まりました。どんな計画なのか。何が問題視されているのか。浮かび上がる都市開発の課題とは――。

総事業費3490億円の再開発

 批判の的は、高木だけで少なくとも700本以上の樹木を伐採などする再開発計画だ。予定地の神宮外苑は、散策やスポーツの場として、長く市民に親しまれてきた。

 一方、外苑内にある神宮球場は建設から90年超、秩父宮ラグビー場は70年以上が経過し、老朽化が課題。反対派からは伐採本数の少ない現在地改修案も出ているが、球場とラグビー場の場所を変えて順番に建て替え、工事中でも試合を続けられるような計画となっている。ラグビー場は28年、球場は32年に完成を予定している。

 総事業費3490億円という巨大開発は、地権者の宗教法人・明治神宮三井不動産などによる民間事業だ。明治神宮所有の球場の建て替えも含めて、大手ディベロッパーが入った再開発事業として進む。新たなにぎわいづくりもめざすという。

 東京都は事業主体ではないが、規制緩和によって高さ200メートル近いビル2棟の建設が可能になった。環境影響評価の着工前の手続きも終わり、2月に事業認可したことで工事は3月に始まった。

 進み出した大型事業をめぐり、開発のあり方にとどまらず、住民合意の形成や、スポーツと経済の関係性といった多くの論点が浮上している。広く都民の理解は得られるのか。見通しは不透明だ。

 明治神宮外苑地区の再開発は、面積17・4ヘクタール、東京ドーム約3個分というエリアが対象だ。スダジイやケヤキなどの大木が生い茂る。1926年の造成当時、全国から3千本以上の樹木が寄付された歴史もある。

計画中止を求める署名19.5万筆

 隣接する聖徳記念絵画館前も…

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