ChatGPT「傍観しないで」 東大副学長が使って感じた創造性

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聞き手・竹野内崇宏
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 東京大学の構成員は変化を傍観するだけでなく、先取りして――。東大が今月3日、「ChatGPTチャットGPT)」などの生成AI(人工知能)への向き合い方を示した声明が話題となりました。海外では使用禁止の動きも出る中で、前向きにも見えるAIへの姿勢をなぜ示したのか。見解をまとめた太田邦史理事・副学長(教育・情報担当)に聞きました。

 ――なぜ見解を出したのですか。

 昨年11月にチャットGPTが発表され、私の研究室でも学生が使っていて話題になりました。自分でも使ってみたら、リポートや成績評価に非常に大きな影響を及ぼしそうだ、と実感しました。

 そこで1月末から、学内の情報システムや教育デジタル化の会議で、生成系AIの可能性と問題点について考え始めました。その結果、こうした技術を一番早く取りこんで使うのは学生だろうから、禁止にしても使っちゃうだろうと判断した。むしろ大学教育にも良い形で活用できるよう議論を進める方向性で合意が得られました。新学期に向けて学生と教職員に考え方を共有する意図で見解を出しました。現在のところ、学内からは妥当な方向性だと評価をいただいています。

前向きなトーンを意識「慎重論では活用止まってしまう」

 ――海外では大学や、国単位でも使用禁止の声が出ています。反対の声は出ていませんか。

 今回の声明では意図的に、生成系AIに対してポジティブな方向性を強調しています。そのため「率先して使うことを促すように見える」という懸念は寄せられました。

 そういったつもりはありません。

生成AIには創造性もあるかもしれない…研究現場の活用法は

見解の背景には「真面目な学生が救われるように」との大学側の思いがあったと言います。記事後半では「AIに創造性もあると感じた」という太田さん自身の研究での活用法も紹介します。

 ただ、こうした情報をネガティブな表現で書くと、全体が慎重論に流れてしまい、日本の場合は活用が止まってしまう恐れがあります。

 スマートフォンが出てきた時、日本では対応できなくて、スマホをベースにしたSNS産業など(の主導権)を米国に持っていかれてしまいました。アプリケーションの開発、産業構造の改革で後れをとりました。産業革命のような現在の状況で、あまり保守的にならずに前に進む意識を持ってもらいたいと考えて、今回の文章にしました。意図的に強めに推進するトーンを出しています。

 ――ご自身が使ってみた感想は?

 (今年3月に発表された最新…

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    増田ユリヤ
    (ジャーナリスト)
    2023年4月18日11時0分 投稿
    【視点】

    先週、私自身も東大の太田副学長に直接お会いして、ChatGPTに関するインタビューをした。この記事には出てきていない話で印象に残ったのは、ChatGPTを使いこなすために、これまで以上に哲学や歴史、文学といった素養を身につける必要がある、と

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    増谷文生
    (朝日新聞論説委員=教育)
    2023年4月18日12時52分 投稿
    【視点】

    東大をはじめ、各大学が続々とChatGPTをめぐり、学生や教員向けに見解を発表しています。濃淡はありますが、おおむね東大と同様、学生には「リスクに注意しながら上手に使いましょう」、教員には「成績評価の方法はしっかり考えてください」といった内

    …続きを読む
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