浜に駆けつけたサーファー 強風と冷たい波、無我夢中のイルカ救助

相江智也
【動画】千葉県一宮町の浅瀬に入り込んだイルカを、沖に戻そうとするサーファーら
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 千葉県房総半島東側の海岸に今月3日以降、30頭を超えるイルカが相次いで打ち上げられた。一部はサーファーが救助して海に戻したが、死んだイルカは計14頭にのぼる。そのとき、何があったのか。

 「生き物が苦しそうに息をする姿を見れば、放っておけない」

 サーファー仲間と、イルカの救助活動に携わった河野正和さん(53)=千葉県いすみ市=は振り返った。

 3日午前8時ごろ、仕事場のサーフショップに出かけようとしていた時、携帯電話が鳴った。サーファー仲間からだった。

 「たくさんのイルカが打ち上がっている」

 現場だという釣ケ崎海岸(同県一宮町)は、自宅から目と鼻の先だ。すぐにウェットスーツに着替えて浜に向かった。

 海から陸に向かって強い風が吹いていた。波は不ぞろいで、サーフィンができる状態ではなかった。

 砂が舞う中、波打ち際に向かうと、数十頭のイルカが横たわっていた。10人ほどのサーファーが数カ所に分かれて、イルカを海に返そうとしていた。

 3メートル近くある大きな個体から、1メートルほどの子どもまで。寄り添うように横たわったり、尾びれを動かし、はあはあと苦しそうに息をしたり。力尽きて動かないのもいた。

 一宮町によると、この日打ち上げられているのが確認されたのは32頭。いずれもカズハゴンドウとみられる。河野さんは2006年2月に一宮町の海岸にカズハゴンドウの群れが打ち上がった際のことを思い出した。

 病気にかかっている可能性もあると考えられ、人にうつるかどうかわからないが、「鼻(噴気孔)から出る潮を吸わない方がいい」と、仲間に念のため伝えた。

 大きい個体は5、6人がかりで動かすのがやっと。冷たい波をかぶりながら、体に傷が付かないように気をつけて、引く波のタイミングに合わせて少しずつ水の中へ。波打ち際から数メートルのところで放した。

 海に入っても、勢いよく泳いでいく様子はなかった。「方向感覚がつかめないのか、浜に戻ろうとするのもいた。ただ、沖まで連れて行けば自分たちが二次災害を起こすおそれがある。それ以上はあきらめるしかなかった」

 1時間半で20頭ほどをいったん海に返した。新たに救助にやってくるサーファーたちがいたこともあり、河野さんたちは活動を終えて引き揚げたという。

 河野さんは「安全を第一に考えながらも無我夢中だった。1頭でも多く、助かってくれればという思いだった」と話した。(相江智也)

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