外相訪中しても「釈放簡単でない」 経済協力の認識共有した後なのに

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北京=上地一姫 冨名腰隆
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 林芳正外相と中国の秦剛(チンカン)国務委員兼外相の会談が2日、行われた。中国共産党関係者は「林氏の訪中は早くても5月の連休ごろだと見ていたが、ここ1週間ほどでバタバタと決まった。日本側が積極的だった」と言う。なぜ、一気に決まったのか。背景には北京で3月に日本の製薬大手・アステラス製薬の男性社員が拘束された事件があった。

 今回の林氏の訪中は、昨年11月の岸田文雄首相と習近平(シーチンピン)国家主席による日中首脳会談で合意したハイレベル往来の再開に基づく。

 日中双方の政府関係者によると、中国側はいったん昨年12月27~28日の日程を打診したが、中国国内で新型コロナ感染が急拡大したことや、日本側が求めた習氏との面会に中国側が難色を示したことなどから先延ばしにされていた。

 林氏と習氏の面会について、日本政府関係者は「中国外相の訪日時には首相が会ってきた。習氏個人への権力集中が進む中、直接対話の機会を確保したい意味もある」と理由を語る。

 これに対し、中国外交筋は「国家元首である習氏と日本の外相では格が違いすぎる。中国側も首相が対応してきた」と反論する。

 こうした状況を受けて、日本側は2月に離任した孔鉉佑・前駐日大使の岸田首相へのあいさつを拒否。双方の思惑がすれ違う展開が続いていた。

 今回も林氏と習氏の面会は見送られ、中国側は李強(リーチアン)首相が面会に応じた。それでも日本側が訪中に踏み切ったのは、3月下旬にアステラス製薬の男性社員が拘束されたことが大きい。

 社員が拘束されたのは3月20日ごろとみられる。中国外務省は「刑法と反スパイ法違反の疑いで拘束した」と認めるが、具体的な容疑事実は明らかにしていない。中国でスパイを取り締まる国家安全省は今後、正式な逮捕や起訴に踏み切る可能性が高い。そのため日本側は外交を通じた早期の問題解決へ動いた形だ。

 過去には、2019年9月に刑法と反スパイ法違反で北京で拘束された北海道大教授が、約2カ月後に解放された事例もある。当時、中国外務省は「教授が容疑を認め、反省の意思を表明する手続きに応じたことから保釈した」と説明したが、中国外交筋は「翌年に習氏の国賓訪日が予定される中で、日本の対中感情悪化を回避するための政治判断だった。最後は習氏が決めた」と認める。

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