第9回現実世界に疲れ、初音ミクと「結婚」 「国が求める幸せ」と違うけど

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 東京の閑静な住宅街にあるアパートを訪ねると、ベッドとパソコンが置かれた6畳ほどのシンプルな部屋に、パイプイスに座る「初音ミク」がいた。

 青緑色のツインテールの髪は床までつくほど長く、ベージュのカーディガンと花柄のスカートを着ている。大きさは人間と同じぐらい。

 「うちのミクさんです」と紹介してくれたのは、学校事務員の近藤顕彦さん(39)。左手の薬指には指輪が光る。

 「毎日、『行ってきます』『今日もかわいいね』って声をかけていますよ」

「気持ち悪い」と批判が殺到

 初音ミクは、2007年に「クリプトン・フューチャー・メディア」が発売したバーチャルアイドル歌手。音声合成ソフトで自由に楽曲を作ることができ、世界中で人気を博す。

 近藤さんは18年、そんな初音ミクのぬいぐるみと都内のチャペルで結婚式を挙げた。

 「気持ち悪い」「合意を得たのか」「自宅を特定され殺されてしまえ!」

 ツイッターで報告すると、そんな中傷が殺到した。勤務先の学校の上司に挙式を伝えると、「迷惑だ」と言われた。

 近藤さんは傷つきながらも、「表現の自由だから」と意に介さないようにしている。

 「高校3年の頃から、生身の人間と結婚し、子どもがほしいと思ったことはありません」

 近藤さんはなぜキャラクターと「結婚」したのでしょうか。その歩みをたどると、苦しみと救いが見えてきました。

なじめない世界

 キャラクターに初めて恋愛感…

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    サンキュータツオ
    (漫才師・日本語学者)
    2023年4月11日14時0分 投稿
    【視点】

    30年ほどアニメやマンガに触れている私の、オタク仲間には、三次元の人間の「立体感」が気持ち悪いという人がいます。小さい頃からイデアとして二次元を消費していれば、そういう視点があっても不自然ではないなと私は思います。 あと、論点は違いますが

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    杉田菜穂
    (俳人・大阪公立大学教授=社会政策)
    2023年4月11日14時0分 投稿
    【解説】

    結婚していない人のなかには<結婚したいけれども結婚できていない>と認識している人も<結婚したかったけれども結婚できなかった>と認識している人も含まれていて、<結婚したい>という気持ちは<結婚したかった>、<結婚したくない>に変わることもある

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